【たむらぱん】前向きさへの違和感
それが込められている

孤独な闘いも彼女のセンスにかかればファニーに昇華。聴けばツキモノもスッと落ちる、「SOS」。選べるカップリング曲も充実した、うれしい2種のパッケージ。全曲、必聴です。
取材:竹内美保

まず、この作品を作られたところでの思いの根幹についてうかがいたいのですが。

日常の中ですごく分かりやすく使われているキーワードとしての“頑張る”。テーマ自体は、それをメインにしているんですけど。ただ、その“頑張る”というのは、“しなきゃならない”というイメージがある気がしていて。で、どうせしなきゃいけないのだったら、それがいいものだと思いたいし、カッコ良いものだと思っていたい。なので、ある意味、自分を納得させるところで作っていったんですけど。だから、どちらかと言うと、“頑張っていきましょう”というよりも、“こうやって思っていると頑張れる”というニュアンスですね。ただ、いつも“頑張らなきゃ”って言わなければいけないところが辛いというか、サビで何回も歌っているようなところに対して、だんだんとウケてくるというか…多分、“切なくなる”という感情に近いんですけど、バカバカしい姿に思えてくるという感覚もあって。あまりにも前向きなところに対して違和感を感じているんだよっていう思いが、実はこの歌や“SOS”っていうタイトルには込められているんです。

すごくトリッキーな印象を受けました、言葉の組みかたや表現の仕方とかに対して。

フフフ。そうですよね。この曲ってサビは突き抜けて、まるで何かが開けていくようなイメージなんですけど、それまでは…例えば、“SOS”という言葉にしても、すごく淡々と発しているところがあって。やっぱり、どこかで冷静な部分…やる気や意欲に満ちあふれている自分がいるんだけど、どこかで“こういうものはムダになることもあるんだな”(笑)と思っている自分も、この曲には織り込んであるんですよね。

それでも、“SOS”を思わず発信してしまう…そこに至る状況とか精神状態ってどういうものなんだろう?と思ったりもしたのですが。

常に“頑張るって素晴らしい”と言いながら、そこに確信があるわけじゃないっていうところなんですね。やっぱり常に不安だから、でもそれを打ち消そうとしているんだから、その分何かしてよ、みたいな。何か見返りがないと頑張れない人間、そこが最終的にはリアルなところなのかなと思ったんです。それに、人に責任を共有してもらう…そういうところって絶対にあるとも思いますし、そうすることでラクになることもいっぱいあるんじゃないかなって。

サウンド面では、いろいろなところでさまざまな音が暴れていて。それが面白い歪みを感じさせてくれました。

曲の雰囲気としては“前向きな感じだったりするのに、ちょっとさわやかじゃない空気は何なんだろう?”という感じを出したかったんです。それと、フレーズも激しいし、後半ではどんどん勢い付くんですけれど、“その真剣さ面白い”みたいな。要所要所で考えちゃうというか…。歌詞で表現している“頑張るって普通にいいじゃん、と思っていた。でも、ホントにいいのかな?”というような、一瞬考え込んじゃうようなニュアンスが欲しかったんです。

アウトロの落とし込みかたもすごい。“そういくのー!?”っていう意外性には、思わずニヤリとさせられます。

アハハハハ。アウトロはミックス的に一番こだわりました。最後の、どこに向かって行くのか分からない、あの不穏な感じで終わるところは、私の中ですごく大事だったので。
たむらぱん プロフィール

岐阜県高山市出身のシンガ・ーソングライター田村歩美のソロ・プロジェクト。作詞・作曲やアレンジはもちろん、ジャケットやウェブ・ページのアート・ワークまで手掛ける真のマルチ・アーティストである。

07年1月から世界最大のSNS<MySpace>において自ら楽曲プロモーションを開始。4ヶ月で1万人のファンを獲得、18万PV、24万回のストリーミングを達成する。それがきっかけとなり<コロンビアミュージックエンタテインメント>からのメジャー・デビューが決まり、日本初の「MySpace発メジャーデビューアーティスト」として、08年4月にデビュー・アルバム『ブタベスト』をリリース。

また音楽以外のフィールドでもその才能は高く評価されており、08年11月に発売された2ndシングル「ゼロ」のビデオ・クリップでは、イラストレーター田村歩美としてSTUDIO4゜Cとコラボレーション/映像製作に参加する。本作は、08年10月に公開されたSTUDIO4゜C製作のアニメ映画『Genius Party Beyond』のエンディング・テーマにも起用され、まさに“ミュージック”と“アート”という2つのジャンルの垣根を超えて活躍している。オフィシャルHP
公式サイト(レーベル)

OKMusic編集部

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