【ザ・クロマニヨンズ】やりやがった
なこの野郎、みたいな感じはお互いに
ある
毎年秋にアルバムをリリースしているザ・クロマニヨンズ。今回もシングル「オートバイと皮ジャンパーとカレー」を10月20日に、アルバム『Oi!Um bobo』を11月10日にリリース。その直後に始まるツアーも楽しみだ。
取材:岡本 明
お互いに作ってきた曲をスタジオで出す
その瞬間はドキドキする
シングル曲「オートバイと皮ジャンパーとカレー」は、いくつか作った曲の中からこれをシングルにしようと?
真島
うーんとね、どれをシングルにするのかはスタッフの人が選んだ。
突き抜け具合が気持ちいいですね。
音も言葉も見えてくる景色もシンプルで、余計な説明がない分、まっすぐに聴き手の心に入ってきますね。
作っている時はどんな曲にしようとか気にせずに作って?
その「オートバイと皮ジャンパーとカレー」もそうですけど、アルバムにはシンプルで心掴まれる曲が多いですね。今回も曲の骨格ができたら、あとはバンドで合わせて作るという作業だったのですか?
真島
基本的に歌を作って、それをスタジオに持って行って。僕なり、ヒロトなりがギターとかで歌ったりして、こんな感じの曲なんだ、じゃあバンドで合わせてみようって作るんだ。しかも、最初はちっちゃな音でやるんだよ、自信なさげに。
甲本
そこでちゃんと言うんだよ、自信なさげにやろうねって(笑)。そうしないと自分だけ飛び出して失敗するから。大きな声で歌うとジャイアンみたいになっちゃうから、みんな小さな音で自信なさげにやろうねって言うの。のび太モードで(笑)。
真島
で、その自信なさげにやった時点で、もう8割方できているんですよ。じゃ、次はでっかい音でやってみようと。僕らはそれをフルガッツと呼んでいるんですけど。
真島
そうそう、それで気持ち良い感じになっているんですよ、バンドサウンドが。
ひょっとして自分で作っている段階でもちっちゃい音で?
真島
ちっちゃい感じですよ。部屋の隅でちっちゃくなって、ちっちゃい声でギターもちっちゃく鳴らしながら録音して。
バンドに持っていくと、あとはもうでかい音になって?
真島
音を出して3回目ぐらいかな、でかい音になるのは。そこから、ここはこうしよう、このリズムはこうしたほうがいいんじゃいのって、みんなでワイワイ言い合って、いつの間にかできてる。
今回もおふたりでそれぞれ曲を半数ずつ持ち寄ってますよね。そこもいいリズムになっていて?
甲本
それが暗黙の了解であることで余計なことを考えなくていい。気を使わなくていいから。“次やりなよ”“いやどうぞどうぞ”って、そういうのは面倒くさい。最初から、“じゃ次やるわ”“じゃあ次やりなよ”って、暗黙の了解があることで楽ですね。
その都度、驚きはあるんですか? こんな曲を持ってきたんだ!っていうような。
真島
それはもちろん。“やりやがったな、この野郎”みたいなさ。そういう感じはお互いにあるんじゃないですか。
甲本
それがあるからずっとやってるというのもあるしね。
“やりやがったな”というのは、今までにない新しい面が見えたというか?
真島
新しいかどうかは分からないけど、何となくその時の、初めてヒロトが持ってきた歌を聴いた瞬間の感じ。
甲本
なんかね、ダジャレの言い合いと似ているよ。ひとつのことに対して誰かがダジャレを言うとさ、負けたくないからもうひと盛りしたクダらないネタを持ってくるじゃない。あの感じ。笑かし合い。もちろん、そこには笑かしだけじゃない、いろんな興奮や、いろんな感動があるけどね。こうきたか、みたいな。
それがずっと続いているというのはすごいですね。
甲本
楽しいんだもん。曲を作ってきて、お互い、スタジオで出したり、出されたりする瞬間はドキドキするかな。
曲との出会い頭のインパクトですね。
甲本
それは、アルバム作りの一番のビッグバンの瞬間なんじゃないかな。そこでもう出来上がっているんですよ、だいたい地球のかたちになっていて。あとはもっと樹が茂るとか、その程度。象が歩く、とか。そんな感じ。分かりやすいのか分かりにくいのか? 俺のこの例えは(笑)。
曲をみんなの前で出す瞬間って、その曲の顔が見える瞬間ですからね。扉が開くというか。
甲本
うん。あと、メンバーの飲み込みの早いこと。僕とマーシーは付き合いが長いから何となく分かるんですよ。ここはこんな感じかなって。だけど、コビ(小林 勝/Ba)とカツジ(桐田勝治/Dr)の飲み込みも早い、どんどん早くなってる。