【SHIKATA】一緒に楽しみたい、分か
ち合いたい
シンガーであるだけでなく、プロデューサーやクリエイターとしても、その名を馳せるSHIKATAが、これまでリリースしてきた自身の作品やコラボ楽曲、さらに新曲も収めたベストアルバムを発表した。そんな本作に対し、彼自身は“自分自身”だと語った。
取材:石田博嗣
タイトル通り、この5年間の活動がうかがえるベストアルバムですが、なぜこの時期にこういう作品を出そうと?
一回区切りを打ちたかったんですよ。"震災後"って言ってしまうと綺麗すぎるんですけど、僕の心境がちょっと変わりまして…それまでって失恋や恋愛ソングばかり書いていたんですけど、もっとポジティブなものを書きたいと思うようになったんです。なので、そこから作り始めた楽曲が、それまでの5年間に作ってきたものと違うというか。それらを自分の中でごっちゃにするのが嫌で、去年までのものと分けたいと思ったんです。ただ、"~Prologue~"ということで、これはベストアルバムなんだけど自己紹介であって、"ここから始まる"っていうのを提示したかったんですよ。
音楽を発信する者として、あの震災が大きく影響していると?
もう音楽というものが受け入れられないと思ってましたからね。みんな生活するだけで大変なのに、音楽のような趣味的なものにお金を払うのかなって思ってしまって、音楽が終わると思ってたくらいですから。でも、逆なんですよね。"音楽を聴いて勇気をもらいました"や"暗い中でひとりでいた時に、音楽を聴いて元気になれました"というような話を聞いて、ああそういうことなんだなって。今までも自分がやりたいことだけをやってきたんだけど、そこでやりたいものがガラッと変わったというか…みんなと共有することを考えるようになりましたね。
また、本作の始まりの2007年というのはNATURAL8を結成した年なのですが、NATURAL8の存在も大きいですか?
大きいですね。NATURAL8は好きなアーティスト同士が集まって、それでCDを作って、自分たちでCDショップを回って…その時にたまたま飛び込みで入ったWoonderGOOの高崎店の人が"いいね!"って言ってくれて、全国の店長が集まる会議とかにも持ちかけてくれたんですよ。で、トータルで5万枚ぐらい売れて、群馬でワンマンライヴもやったんですね。そしたら800人ほど入って、僕らがステージに上がったら総立ちになって…それで音楽観が変わったというか。僕らもまだ尖ってて、みんな自分のしたいことをしてたんですが、"自分がやったことがないことを試してみたい"って言うようになったりして、あのワンマンライヴでそれぞれが何かを感じたと思うんですよ。進む道が決まったというか。僕も"歌だけじゃなくて、もっと他にできることはないかな?"と思って、曲作りやプロデュースをやっていこうと思ったし。
そんな「ラブレター with SHIKATA」などプロデュースワークしてきた楽曲も本作には収録されていますが、収録曲のセレクトの基準というのは?
難しかったんですけど、着うた(R)とかで結果が出ているものは絶対に入れたかったし、あとは"こういうことをやってるんだよ"ってのを知ってもらいたかったから、プロデュースワークだったり、フィーチャリングものも入れて、新曲は好きなことをやらせてもらった感じですね。ストックが500曲ぐらいあるんですけど、自分が入れたいものを入れたというか。
そうなんですね。「Lose control」はアッパーな曲でアルバムの中でもフックになっているので、バランスを考えて新曲を入れたのかなと思っていました。
この曲はライヴではやっていて…曲を作ったらすぐに披露したくなるんで、ライヴでは音源になっていない曲ばかりやってるんですよ(笑)。で、この曲は評判が良かったんで絶対に入れたかったんです。
では、アルバムのリード曲でもある「ただ...ありがとう」は?
これも絶対に入れたかった曲ですね。『ツレがうつになりまして。』っていう映画を観て、次の日に書いた曲なんですよ(笑)。隣にいてくれることで強くなれるっていう…そういう映画でしたからね。"ありがとう"じゃなくて、"ただ..."っていうのが付くのは、あの映画の中でただ横にいてくれたことにお互いが感謝していて、それに感動したので。
<div class=“contents copyint”>──もう1曲の新曲は、JAY`EDさんに提供した「Shine」のセルフカバーなのですが。
この曲を作った時に"うわっ、来た!"と思って、僕も歌いたいと思ってたんですよ。JAY`EDくんの声が好きなんで、JAY`EDくんが歌ったものも聴きたかったんですけど、いつか自分のバージョンも出せたらいいなと思ってたんで、このタイミングで入れたというか。
恋の始まりの心躍るようなハッピーな想いを込めたポップソングなので、これもまた「Lose control」とは違うアルバムのフックになっていると思っていたのですが。
そうなんですよね。僕、ライヴで手を横に振るような曲がないんですよ。バラードかカッコ良く歌う曲しかなかった。なので、『ただ...ありがとう』もそうなんですけど、新曲はそこを意識しました。みんなで楽しみたいんだっていうのが、分かってもらえる3曲になってますね。
つまり、SHIKATAくん自身がそういう姿勢になったということですよね。
そうですね。エゴで"聴けよ"っていうものだったのが、一緒に楽しみたい、分かち合いたいって思うようになったから、こういうポジティブなものだったり、一緒に歌えるものを作るようになった…でも、そういうものを意識して作ろうと思ったわけじゃなくて、自然にそうなった感じなんですよ。こうやって取材とかさせてもらっている中で、"あぁ、俺、そうだったんだ"って逆に気付かされたというか。
では、このアルバムを作り終えて、どんな作品が出来上がったと実感していますか?
自分自身ですね。一緒に飲みに行くのと一緒です(笑)。これを聴いてもらったら、"SHIKATAってこういう奴なんだ"って分かる。
本作はベストアルバムでありつつ、"Prologue"ということですが、今後はどんな歌を発信していきたいと思っていますか?
僕はJ-POPから始まっている…それこそCHAGE and ASKAやMr.Childrenから始まって、ロックに行ったり、ハードコアに行ったり、ビジュアル系に行ったり、R&Bに行ったり、いろいろしてきたんですけど、今は自分の好きなJ-POPをどこまで詰められるかっていうことをやっているので、"SHIKATAってポップだよね"って言われるようなりたいですね。
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