【Salley】想像力を掻き立てられる曲
こそが音楽だと思う
耳を撫でる心地良いメロディーにアイリッシュの風を吹き込んだサウンドと、どこかひんやりとした透明感あふれる歌声が心を掴むSalley。J-POP界の新たなスタンダードになるだろう彼らの第一歩をしっかりと確認してほしい。
取材:吉田可奈
Salleyは結成してどのくらい経つのですか?
うらら
実は、まだ結成して2年も経っていないんです。
となると、結成してからメジャーデビューするまではすごくめまぐるしい日々だったのでは?
うらら
そうですね。私が大阪から上京してきたのが結成する3カ月くらい前だったのですが、それまでしっかりした音楽活動をしたことがなかったんですよ。
え! 何のツテもなく上京してきたんですか?
うらら
はい(笑)。それまでサークルなどで趣味程度でライヴハウスで歌うことはあっても、それで“どうしたい”とは思ったことがなかったんです。ただ、私自身が大学3回生になって、周りが就職活動や結婚などをして社会の一員になっていくのを見て、“ 私はここにいるべき人じゃない、私は歌うべきところで歌わなくちゃ”って思ってしまったんですよね。あと1年で大学も卒業だったし、周りには“卒業だけはしておきなよ”と言われたんですが、卒業したことが私の中で安心となって“逃げ”につながることがすごくイヤだったんです。それなら、今この気持ちの時に辞めて、誰も知らない、誰も守ってくれない東京でイチからやってみたいと思ったんです。
上口
僕自身はすでに東京でサポートギターを弾いたりと、この業界に足を突っ込んでいたんですが、自分の歌を作りたいと思い、僕の歌を歌ってくれる女性ヴォーカルを探していたんです。YouTubeで歌っている人に声をかけたり、紹介してもらったりしてたくさんシンガーの方とお会いしていたんですが、ピンとくる声に出会えなくて…。そうして喉が渇き切った状態だった時に、うららの歌声に出会ったんです。その時に、僕のやりたい音楽を全部具体化してくれる人だなって直感で思ったんですよね。
うららさんは上口さんに声をかけられた時の印象はいかがでしたか?
うらら
最初は背の高いボーっとした人だなって思ったんです(笑)。でも、当時私は勢いだけで東京にきて、アコギを片手に歌ってたのはいいものの、どんな歌を歌っていいかも分からなかったし、私がこうすることでちゃんと表舞台に立てるかどうかなんて分かってなかったんです。迷いに迷って、ほんとにこれでいいのかなって思った時に、上口くんに“いい声しているね”って声をかけてくれて、すごく嬉しかったんですよ。
お互い、会うべくして会ったふたりなのかもしれないですね。何事もタイミングが一番ですから。
うらら
そうかもしれないですね。声をかけてもらった時に、上口くんが5曲の音源を渡してくれたんです。その曲を聴いた時に、すでに曲が全曲完成形であって、彼の本気度が分かったんです。“あぁ、この人についていけば間違いないな”って実感したのも、このタイミングなんです。
そこでSalleyを結成されたんですね。その当時のふたりの音楽性は同じ方向を向いていたのですか?
上口
最初はお互いを分かり合うために、曲を作ってはうららに渡して、うららが歌詞を書いてくるというのを繰り返していたんです。そうしていくうちに意思疎通がとれてきたんですよね。僕の作る曲は色で言うなら赤ではなくて青。そこに、透明感のあるひんやりしたうららの声を乗せたいと思って曲を作り始めていたんです。そこで思い浮かべたのが、アイルランドの音楽だったんです。
“青”という色はすごく分かる気がします。うららさんの歌詞は当時から変わっていなかったんですか?
上口
最初に話した時は、“音楽をやりたい”って真剣に言うのは恥ずかしいって言っていたので、そういう子なのかなって思っていたんです。でも、どんどん歌詞が上がるにつれて、照れ隠しなんだなってことに気が付いたんですよ。歌詞もストレートに言うことが少なくて、いろんな入口があって、いろんな答えが用意されているようなものを仕上げてくるんですよね。それを見て、“アツいな”って思ったんです。
うらら
いやいや、アツくないから!(笑) どちらかと言うと冷ややかな目で世間を見ているという…。
それが照れ隠しですね(笑)。確かに、その答えがたくさん用意されているというのは、デビューシングル「赤い靴」に対してもすごく思います。
うらら
この曲は、まさに私のことを歌っているんです。最初にこの曲を上口くんからもらった時に、真っ暗な空間の中に赤い靴だけが強烈な色を放って存在している絵が浮かんだんです。そこからイメージを膨らませて書いていきました。
音楽を辞めたいと思っても、どうしても辞められない、そんなうららさんの心境が見えますね。
うらら
そうですね。最初は自分の強がりを書いていたんですが、どんどん剥がれていって、最後はこんな展開になるとは思ってもいなくて… 。いつも歌詞は勢いで書くので、わざとまとめようとしないんです。
上口
まとまってないからこそ、この主人公が幸せなのか、不幸せなのか、聴く人によって異なってくると思うんです。
うらら
主人公は赤い靴を脱げないと言っているけど、もしかしたら脱ぎたくないのかもしれない。いろんな想像をしながら、自分にあてはめて聴いてもらいたいです。
すごく想像力を掻き立てられる歌詞ですよね。
上口
そこがうららの書く歌詞のいいところなんです。今のJ-POPは直接的なものが多いけど、想像力を働かせてさらに大きくなるのが理想の歌なんです。とはいえ、結果的に“ 何を言ってるの?”とならないのがすごい。だからこそ、共感してもらえると思うんですよ。
すごく重いことを歌ってるのに、さらりと聴けるのもSalleyの色だと思いますね。
うらら
そこは大事にしたいですね。これからもどんなに深い歌でも、サラリと歌いこなせるアーティストになりたいと思っているんです。
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「赤い靴」2013年05月29日発売ビクターレコーズ
- 初回限定盤(DVD付)
- VIZL-538 1500円
サリー:2012年に結成。キュートで奔放なキャラクターが魅力のヴォーカルうららと、抜群の楽曲センスを持つ上口浩平からなるポップスユニット。13年5月にシングル「赤い靴」でデビュー。14年4月に1stアルバム『フューシャ』、15年7月には2ndアルバム『エメラルド』をリリース。ラジオ日本のレギュラー番組『Salley’s Studio.』が好評放送中!Salley オフィシャルHP
Salley オフィシャルブログ