【新山詩織】たった一言で変わってし
まう、この世界

今年4月にデビューを果たした現役女子高生シンガーソングライター・新山詩織が、2ndシングル「Don't Cry」をリリース。ホラー映画『絶叫学級』の主題歌として、17歳が抱えるリアルな心の“ゆらぎ”を物語に重ねて書き下ろしたロックチューン。その光と影とは?
取材:清水素子

「Don't Cry」は映画『絶叫学級』の主題歌ということで、当然、歌詞も映画内容を意識して書かれたんですよね。

はい。ホラー映画ではありますけど、実際に台本と映像をいただいて目を通したら、学校内での人間関係が一番大きな軸になっているなと感じて。そういう面で共感できる部分も多かったので、今の自分が思っていることをそのまま書けました。

共感できるって、具体的には?

川口春奈さん演じる主人公の加奈が、幽霊に対面して“誰よりもきれいになりたい”って言うシーンがあるんですね。そういう願望や欲って、普段は口に出したりしないけれど、きっと誰しもが持っていて。日常でもポロッと零した些細なひと言が、周りを思わぬ方向に変えてしまうことがある…例えば休み時間に友達とトイレにいって、もうすぐ授業始まるから“先に教室に戻ってるね”って言ったら、嫌な空気が流れちゃったり。それで《たった一言で世界が変わってしまう》っていうのを一番のキーワードに、歌詞を書いていったんです。

サビにも《たった一言 それだけで 世界 変わってしまうから》というフレーズがありますもんね。それが分かっているから、人はその“一言”を心の奥に押しとどめてしまう。

本当は言ってしまいたい自分もいるのに。最後の《言えなくてゴメン》は、そんな自分に向けて言ってる台詞なんです

つまり、歌の中ではふたりの自分がせめぎ合っている?

そうですね。そのふたりが混在してたり、衝突したり、もうゴチャゴチャになっていて。そんなどうしようもない心の内を書いてる、ほんとに暗い歌詞なんですよ。だから、自分で読んでても涙が出てきそうになることがあって、そういう想いをしてる人に“泣くな!”と言って支えたい気持ちを、“Don't Cry”というタイトルに込めてるんです。

いや、複雑。でも、だからこそ深い。

人間って心があるから想い合ったりもできるけど、その心は些細なことで変わってしまうから、周りを傷付けることもある。そういう意味でも、この世で何より怖いものは“人”だなって、『絶叫学級』を観て感じたんです。それくらい人の心って複雑で、きれいに割り切れることなんてないからこそ、自分にとっては大きなテーマであり続けるんでしょうね。

なるほど。この曲が強さと弱さ、明るさと暗さといった相反するものを併せ持っている理由が見えてきました。

歌詞は暗いのに、曲調は明るいし(笑)。曲自体は主題歌のお話をいただくずっと前に作っていて、その時は無理に明るい歌詞を付けようとしてたんです。でも、主題歌に選んでいただいて歌詞を書き直したら、ちゃんと普段は言えない自分の想いを全部書けて、書き終わった時に“あ、やっぱりこれがほんとだ”って感じられて。心に溜まっていたものを吐き出せたから、すごくスッキリしました。

地の底から響くようなドラムと美しいピアノとの対比も印象的で、そんな自分の曲が映画のエンドロールに流れているのを観た時は、やっぱり嬉しかったでしょ?

実は私、結構マンガが好きで。読み始めたきっかけが『りぼん』だったから、そこに連載中のホラーコミックを原作にした映画の主題歌っていうのは、すごく嬉しいお話だったんですね。だから、きっと小中学生の子たちが友達連れや親子できたりするだろうし、いろんな年代層の方に自分の曲が聴いていただけるんだなぁと映画を観たら実感して、余計に嬉しくなりました。

一方、カップリングには前回に引き続き、ご本家とのセッションカバーが収録されていて、今回は「ありったけの愛」をTHEATRE BROOKとプレイされてますけれど、こちらで弾かれてるギターがかなり難易度が高かったとか。

なので、ちゃんと弾けるか不安で。最初に佐藤タイジさんにお会いした時、少し弱音を吐いたら“とにかく練習してこい!”と言われて、家でひたすら練習したんです。その成果は、ちゃんとレコーディングで出せたので良かったですね。でも、これからライヴでも弾くから、もっと練習しないと。

もともとお好きだった曲ということですが、どんなところに惹かれたのでしょうか?

単純に、このファンクな感じがカッコ良いなって。歌詞は少し大人な感じがして、当時の私には少し難しかったんです。こういうリズムの曲って今まで歌ったことがなかったから、レコーディングでは自然にノるのが難しかったりもして。ただ、休憩時間の時に、この曲に対するタイジさんの思い入れだとか、どれだけ自分が心を込めて歌えるかが一番大事だっていうお話をうかがった上で歌ってみたところ、すごく変わったんです。歌詞も読み直してみたら、明るいけれど切なさもあることが感じられて、これから曲を作っていく上でも、すごく良い経験になりましたね。

そして、8月2日には『ROCK IN JAPAN FES.2013』への出演も決まりましたが。フェスはよく観にいかれてました?

はい。好きなミュージシャンがいっぱい立ってる、あのステージに自分が立ったら、どんなふうに観られるんだろう?って昔から考えてたので、出演できると聞いた時は夢のようでした。当日になったら自分がどうなっちゃってるか…想像がつかない(笑)。

いや、ギターを持つと人が変わって、かなりロックなステージングをしてくださる方ですから、きっと大丈夫ですよ。

そのへん、自分では特に意識してなくて。ライヴ直前はずーっと“緊張する”って言ってるのに、ステージに立つといつも興奮状態なんです。私自身、ライヴハウスがすごく好きなので、いずれはライヴハウスツアーもやってみたいですね。ステージでは常に出せる分だけ全部出したい!って思っているので、もし少しでも興味を持ってくださる方がいれば、ぜひライヴを観にいらしてください。
「Don't Cry」
    • 「Don't Cry」
    • JBCZ-6002
    • 2013.07.10
    • 1050円
新山詩織 プロフィール

1996年2月10日生まれ、埼玉県出身の女性シンガー・ソングライター。小学生の頃から父の影響で70~80年代のブルース、パンク、ロックを中心とした洋/邦楽を聴いて育つ。中学では軽音楽部に所属し、ガールズ・バンドを結成。中学卒業直前に、初めてのオリジナル曲「だからさ」を衝動的に完成させる。高校に入ると、ギターと歌のレッスンをスタート。さらに、新宿、大宮、池袋、渋谷などでストリート・ライヴを開始。高校2年の春、『Treasure Hunt 2012』に応募し、最終審査でグランプリを獲得する。メジャーデビューに向けて、創作活動、ストリート・ライヴのほか、念願だったバンド・セッションも行なうようになり、ライヴハウスでの活動もスタートさせる。2012年12月、“現役女子高生シンガー・ソングライター”としてアーティスト・デビューし、0thシングル「だからさ~acoustic version~」をメール・マガジン会員登録者にプレゼントした。2013年4月、シングル「ゆれるユレル」でメジャーデビュー。憂いのある独特の湿ったヴォーカル、ロックなサウンドを生かした楽曲がたちまち注目を浴びる。その後、コンスタントなシングルのリリースに加え、ラジオやライヴ・イベントへの出演、さらに大型フェス『JOIN ALIVE』や『ROCK IN JAPAN FES』への出演を重ね、着実にステップアップ。2014年3月、1stアルバム『しおり』を発表した。オフィシャルHP
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