【井手綾香】新たなチャレンジを詰め
込んで ワタシプラス“新しい私”
長い髪をバッサリ切り落とし、晴れやかに生まれ変わった井手綾香が2ndアルバム『ワタシプラス』を発表。嘘偽りのない“ワタシ”の想いが、今、軽やかに舞い踊る。
取材:清水素子
前作『atelier』から2年振りとなる『ワタシプラス』なのですが、その頃に比べると別人のようなアルバムですね。
まさに、これは変化と挑戦の塊みたいなアルバムなんですよ。一番のきっかけが昨年のシングル「235」のMVの中で髪をバッサリ切ったことで。それまで井手綾香はロングヘアで、フンワリしてて前向きで、聴く人の背中を押すような曲を歌うアーティストなんだっていうイメージに、自分で自分を押し込めているところがあったんです。もちろん、そういう曲を書くのも好きだけれど、本当はもっと尖った言葉やロックな音でも歌いたかったし、いろんなことに挑戦してみたかった。それで踏ん切りをつけるために、思い切って髪を切ったら、自分でも驚くくらい変わったんですよ! 服装やライヴの立ち居振る舞いも変わって、ギターを始めたり、「消えてなくなれ、夕暮れ」では初めて失恋ソングまで書けたし。自分のことをためらわず、曝け出せるようになったんですね。
そう言えば、今回も切ないラブソングが多いですが…。
ほぼノンフィクションです。正直、それしか出てこない時期だったんですよね(笑)。私、恋愛に関しては、ほんとに踏み出せないまま終わってしまうことが多くて…でも、同じような想いをしてる人って、きっと大勢いるだろうから、曲にしてもいいだろうと。そうやって自分の体験を赤裸々に歌えるようになったことが、何より前向きだと思ったので、今回は抽象的なことじゃなく、自分自身の生活に忠実に沿って、情景をイメージできる曲を書くことに専念したんです。
リード曲の「飾らない愛」はNHKドラマ『今夜は心だけ抱いて』の主題歌ですが、こちらも実体験?
はい。子供の頃にクリスマスプレゼントが気に入らずに(そのプレゼントを)投げ飛ばして、私、母親を泣かせてしまったことがあったんです。ドラマが母娘関係をテーマにした物語だったので、その経験をもとに、何があっても明るく振る舞って自分を守ってくれる、母親ならではの無償の愛を書きました。「最後のさよなら」も祖父母に向けた曲で、ふだん何気なく言ってる“バイバイ”も、いつか最後になる時がくるかもしれないんだという気持ちが軸になってます。そうやってリアルな心情を書いた新しいタイプの曲と、髪が長い頃の私が書いた曲が同居しているので、タイトルも“ワタシプラス”なんです。
なるほど。従来の私、プラス新しい私。
今作はセルフプロデュース作ということで、ジャケットデザインや衣装にも関わらせていただいたんですよ。今の自分より上を目指そう!という想いを表したくて、ジャケット写真は真上から撮っていただいたり、全部の楽器を自分で演った曲もあって。そこでパーカッションの演奏だったり、編曲だとかで手助けしてくださった周りの方々がいてくれたからこそかたちになった作品なので、そういう意味での“ワタシプラス”でもありますね。
最後の「髪を切りました」はアコギ弾き語りの一発録りで、そこからも“ワタシ”へのこだわりが見えますよ。
この曲は「235」の発売&誕生日記念のワンマンをやった時、どういう気持ちで髪を切ったのか、それでどれだけ前向きになれたかを伝えたくて、ライヴのために書いた曲なんです。そうやってライヴをイメージして書いた曲も含んだアルバムを携えて、6月に大阪と東京で行なうワンマンでは、またひとつ新しくなった井手綾香を感じていただきたいですね。
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