【城 南海】奄美大島の要素と融合し
完成したカバー作品

韓国ドラマ『馬医』のテーマ曲、エンディング曲、挿入歌の全3曲を1曲ずつ3カ月連続配信する城 南海。ドラマのテーマである“命の大切さ”と彼女自身のルーツである奄美大島の自然や音楽がリンクした作品となった。
取材:桂泉晴名

「いのちの橋」は前作「チョネジア~天崖至睋~」に引き続き、韓国ドラマ曲のカバーだそうですね。

はい。でも、もともと「いのちの橋」の原曲はインストなので、歌詞が付いてなかったんですよ。そこで「チョネジア~天崖至睋~」の日本語詞を書いてくださった松井五郎さんに今回も詞を付けていただき、馬飼野康二さんに編曲していただきました。ヴォーカルが入っている曲をカバーするのと、インスト曲をカバーするのではまったく感覚が違いました。歌う用のメロディーでないし、いろいろな楽器の音が入っているから、声を入れる場合はどこを歌うかなど難しかったですね。でも、曲自体で『馬医』のテーマである“命の大切さ”が表現されていたので、気持ちを込めて歌えました。

『馬医』は男性が主人公ということもあって、壮大で力強いテーマ曲だと感じました。

低い音があるかと思えば、コーラスはとても高くて。声の幅が広い曲ですね。おかげでいろいろな声を試すことができました。あと、「チョネジア~天崖至睋~」では入れなかったグイン(奄美大島の発声法)も入れて。今回は奄美色をかなり出したんです。レコーディングでは間奏や最後のところで私が奄美大島の三味線と、馬飼野さんからお借りした沖縄の三線を弾いています。奄美大島の三味線は、沖縄から入ってきたものだからつながっているんですよね。三線も中国大陸から渡ってきたものですし。また、今回のレコーディングでは奄美大島にとても詳しいパーカッショニストのスティーヴ エトウさんに参加していただいたんです。最初のドーンという大陸的な音はドラム缶の音なんですよ。他にも一緒にチジン(奄美大島の太鼓)を叩いたり。奄美大島のエッセンスを入れて力強い音を作れたこともすごく嬉しいです。

続いて8月の配信曲は、『馬医』のエンディング「ただ一つ」のカバー。切なさがあふれ出ている楽曲ですね。

原曲を歌っているのはソヒャンさんという方で、すごくパワフルに歌われています。本当にザ・バラードという曲ですね。「いのちの橋」で力強さを表現し、切なさやどうにもならない思いはこのバラードに表れているのかなと感じています。『馬医』は医学がテーマのドラマですが、その傍らでは切ない恋物語も大事な要素としてあって。この曲は感情を曝け出さないと歌えないんです。それこそ体全体で鳴らしていますから、「チョネジア~天崖至睋~」の抑えるような歌い方とは違いますね。

冒頭と間奏で不思議な音が入っていますが。

あれはピリという韓国の笛なんです。この笛が本当に大事な色を加えてくれています。小さな竹の笛で、金管楽器みたいな音がするんですよ。でも、木管楽器のような木の温かさもあるから“何の楽器だろう?”と思っていたら、やはり韓国の伝統楽器だったんです。今回のレコーディングでは原曲で演奏していらした方にお願いしたので、臨場感がそのままあって。実際に吹けたら気持ち良いんだろうなと思いました。私もいつかピリを演奏できるようになりたいです(笑)。

え! 自分でも演奏してみたいと?

自分でその音を鳴らすと、曲をより表現できる気がするんです。だから、なるべく使われている楽器は挑戦したいですね。

5月に行なわれた城さんのワンマンライヴでは、二胡などの起源となった韓国の伝統楽器“ヘグム”を演奏しながら「チョネジア~天崖至睋~」を披露されていましたね。

すごく緊張して心臓が出そうでした(笑)。ヘグムは韓国で買ったんですけど、右手の弓使いが難しくて。さらに弦も棒から浮いている状態で引っ張って音を調整するんです。独学で練習していましたが、日本に1店舗だけ韓国の伝統楽器を扱っているお店があると聞いたので、そこに直接行ったら、いきなり店員さんから“持ち方が違うわよ”と言われてしまいましたけれど(笑)、いろいろ情報を教えてもらいました。

独学でもライヴで演奏できるまでに仕上げる城さんがすごいです。そして、9月配信は『馬医』の挿入歌「悲しくても」で。

これは「ただ一つ」とも全然違う、それこそささやくような歌です。消え入りそうな“儚さ”がすごく好きで、ずっと歌うのを楽しみにしていました。この曲は韓国でレコーディングしたんですよ。ドラマの空気を生で感じたくて、実際に歌う前に撮影されたロケ地にも行ったんです。セットだけど、当時生きていた人の魂を感じ取れた気がして。歌っている世界のことをより理解できたと思った上でのレコーディングだったので、空気感に寄り添いながら歌えました。

『トンイ』『馬医』を手掛けたイ・ビョンフン監督との対談が実現し、城さんの歌声をほめていらしたとうかがいましたよ。

監督は「チョネジア~天崖至睋~」を聴いてくださっていて、『トンイ』の世界に合わせて凛としたやさしさを持つ女性を目指して歌ったことを評価していただいたのかな、と思いました。私は緊張していましたが、とても気さくに話してくださって。みんなのお父さんみたいな感じの方だからこそ、人からの信頼も厚くて、数々の名作が生まれるんだと感じました。

『馬医』にちなむ3曲をカバーされたことは、城さん自身にとってどういう経験になったと思いますか?

『トンイ』の「チョネジア~天崖至睋~」をきっかけに監督と直接お会いできたのは素晴らしいことだし、3曲全て歌わせていただいたのも、すごく嬉しかったです。その中で、第二弾カバーでは「チョネジア~天崖至睋~」と違う面をお見せしたいと思って。韓国の音楽に惹かれたのは奄美大島とルーツがつながっているからだということも分かりましたし、現地に行ったことも歌に昇華していけたのではないかと感じています。また、奄美大島の自然や命の大切にする心は『馬医』にも通ずると受け止めていて、そういう思いを奄美のエッセンスを入れてこの3曲で表現できたと思います。
「悲しくても」
    • 「悲しくても」
    • 2014.09.17
    • 「ただ一つ」
    • 2014.08.20
    • 「いのちの橋」
    • 2014.07.16
城 南海 プロフィール

キズキミナミ:平成元年 鹿児島県奄美大島生まれ。奄美民謡“シマ唄”をルーツに持つシンガー。2006年に鹿児島市内でシマ唄のパフォーマンス中にその歌唱力を見出され、09年1月にシングル「アイツムギ」でデビュー。代表曲は、NHKみんなのうた「あさなゆうな」、「夢待列車」をはじめ、NHKドラマ『八日目の蝉』の主題歌「童神~私の宝物~」、NHKBSプレミアム時代劇『薄桜記』の主題歌「Silence」、一青窈作詞、武部聡志作曲・プロデュースのシングル「兆し」など。また、テレビ東京『THE カラオケ★バトル』に2014年7月に初出演以来、毎回高得点をたたき出し、現在、番組初となる10冠を達成。オンエアの回数が重なるにつれ、カバーアルバムを望む声が多く集まり、15年に初となるカバーアルバム『サクラナガシ』『ミナミカゼ』、17年11月には3枚目のカバーアルバム『ユキマチヅキ』をリリース。20年にはディズニー実写映画『ムーラン』の日本版主題歌「リフレクション」の歌唱が決定し、日本版の訳詞も担当。ライヴでは毎年恒例のワンマン公演『ウタアシビ』の他、さまざまな音楽フェスティバル、イベントに出演している。城 南海 オフィシャルHP

城南海 プロフィール

キズキミナミ:平成元年、鹿児島県奄美大島生まれ。奄美民謡“シマ唄”をルーツに持ち、2009年1月にシングル「アイツムギ」でデビュー。2014年7月にテレビ東京『THE カラオケ★バトル』へ初出演以来毎回高得点を叩き出し、番組初の10冠を達成。城南海 オフィシャルサイト

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