【ゲスの極み乙女。】自分を出したい
と思えるバンドになった
メジャーデビューからわずか半年で、J-POPシーンの最前線に浮上した話題の4人組。さらにポップに進化した初のフルアルバム『魅力がすごいよ』について、全曲の作詞作曲を手掛ける中心人物の川谷絵音(Vo&Gu)に訊いた。
取材:金子厚武
“魅力がすごいよ”って、すごいタイトルですよね(笑)。
最初は“魅力がすごいよ(笑)”っていうタイトルだったんですよ。「猟奇的なキスを私にして」からの流れで、よりポップなものにしたいとは思ってたんですけど、歌詞の内容は“(笑)”に則したものというか、これまでの流れを踏まえた皮肉っぽいものにして、第一章を完結させるっていうイメージだったんです。でも、そういう歌詞ってバンド名に引っ張られて出てきたもので、そもそも自分がやりたいことではなかったんですよね。なので、今回は何も考えずに好きなものを作ろうと思ったんです。
結果的に、これまで以上にポップな作品になってますね。
今回、僕のポップ・スイッチみたいなのが入ったんです。“ここはこういうメロディーじゃないとダメだ”っていう、ストライクゾーンみたいなのがもともとあって、最初はそこから外れたものも入れようと思ってたんですけど、最終的には全部そのゾーンに収束させたくなったんです。“フェスで盛り上がる曲を作ろう”とか考えた時もあったんですけど、そういうことを考えるのは違うなって思うので、今後はホールとかでもできるようなバンドになっていきたいです。
一方で、歌詞の内容はやや内省的なものになりましたね。
結構今回ひとりで作業をすることが多くて、鬱っぽかった時期もあったので(笑)、それが反映されてるとは思います。ただ、歌詞が暗くなったのは、別に後ろ向きだったわけじゃなくて、このバンドが自分を出したいと思えるバンドになったっていうことなんです。これまではindigo la End(川谷が所属するもうひとつのバンド)で自分を出していて、ゲスはプロジェクトとしてのバンド名に引っ張られて皮肉っぽい歌詞を書いてたのが、「だけど僕は」(1stシングル「猟奇的なキスを私にして/アソビ」に収録)っていう曲を作ってからは、このバンドでもちゃんと自分を出したいと思ったんです。なので、このアルバムは暗いんですけど、実はすごく前向きなアルバムなんです。
1曲目の「ラスカ」からして《今日もまた 嫌なことばっかり》って歌ってますけど、決して後ろ向きではないと。
これはアルバムの中で一番最後に作った曲で、最初はアルバムの中で大事な曲になるとは思ってなかったんですけど、その部分の歌詞が最初からあって、レコーディングの辛かった時の心境とぴったりだったから、これはちゃんとかたちにしたいと思うようになって。ラップの部分が最初から高い音で始まるのも自分の中で新鮮だったし、1曲目が暗いっていうのも逆に面白いかなって思います。
でも、最後には《届けメロディ》って歌っていて、ここが今の絵音くんの心境なのかなって思いました。
そこは一番最後に書きました。アルバムの出来上がりが見えてきて、自分の中でも希望が見えてきたし、1曲目にしようと思ったから、ちゃんと橋渡しになる歌詞を最後に書こうと思って、結果的にそこが自分でも一番気に入ってます。
「デジタルモグラ」は皮肉っぽい部分も残ってますね。
タイトルから曲を作るんですけど、もぐら叩きから連想して。潜ったり、パッと出てきたりしながら、みんな誰かに撮影されてるっていうのがネットみたいだと思って、最初にこのタイトルを付けたので、皮肉っぽい感じがちょっと残りましたね。あとで知ったんですけど、地震速報を出す“デジタルもぐら”っていうキャラクターがほんとにいて、思いもよらぬ意味も出ちゃいました(笑)。
僕個人的に好きなのが、「サリーマリー」で。
これはメンバーもトップクラスで“好き”って言ってます。「子犬のワルツ」のイメージが最初からあって、曲の後に入れようとは思ってたんですけど、「子犬のワルツ」ってちょっと悲壮感あるじゃないですか?
この曲がアルバムの最深部って感じがします。
ニューウェイヴ感がありますよね。
フランスにシャトー・マルモンっていうシンセポップのバンドがいて、その感じはちょっとイメージしました。ちゃんMARIが最初からシンセのリフを弾いてて、ニューウェイヴな感じで突き進もうと思ったんですけど、「子犬のワルツ」のイメージもあったから、途中でコードを変えたりしたら、最初のニューウェイヴ感に切ない感じが加わって、新しいなって。
ストリングスが入った「bye-bye 999」は特に新鮮でした。
フルアルバムだからこういう曲があってもいいんじゃないかと思いつつ、僕も半信半疑だったし、メンバーも最初は“こんなのやって大丈夫?”って感じでした。でも、結果的には全員これが一番好きな曲になって、実はこういうのが一番好きっていうのが、この4人でやってる理由でもあるんですよね。やりたいことをやればちゃんと前に進めるっていうことが今回分かったので、これからはこういう一面も出していきたいです。
では、最後に今後のバンドの展望を教えてください。
これからもほんとに、ただいい音楽を作って、聴いてほしいからやるっていう、ただそれだけでいいんだなって、最近は思っています。
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『魅力がすごいよ』2014年10月29日発売Warner Music Japan
- 【完全生産限定ゲスなトート盤】
- WPCL-12024 3780円
- ※トートバッグ付
- 【初回限定魅力的なプライス盤】
- WPCL-12025 2300円
2010年2月、川谷絵音を中心に結成。14年4月に3rdミニアルバム『あの街レコード』でunBORDEよりデビュー。その後同年8月に後鳥亮介が加入、15年に佐藤栄太郎が加入し、現在の体制へ。19年10月、アルバム『濡れゆく私小説』をリリースし、同年同月より『indigo la End ONEMAN HALL TOUR 2019-2020「心実」』を開催、10公演を回る。indigo la End オフィシャルHP