【WHITE ASH】そんな簡単に吹き飛ば
されない足腰の強さ
WHITE ASHが両A面となるニューシングル「Insight / Ledger」をリリースする。彼らの理想をついに具現化したアルバム『THE DARK BLACK GROOVE』の次の一手ということで期待も高まる中、タイアップにも応えながら、自分たちの光と影を見事にロックに表現している。
取材：高橋美穂
まず、3月にリリースされたアルバム『THE DARK BLACK GROOVE』を改めてどう思いますか？
のび太
今までも“最新作が最高傑作”っていう気持ちで作ってきたんですけど、それにも増して『THE DARK BLACK GROOVE』は、周りを気にせず自分たちのやりたいことだけやったアルバムで。カッコ良いと言ってくださる方も多くて、作って良かったと思っていますね。
その次の一手がタイアップも付いていて、コアなところからお茶の間まで引き寄せられるような状況ですよね。
のび太
ありがたいですね。「Insight」は『GATCHAMAN CROWDS insight』の主題歌としてお話をいただいて、前の『GATCHAMAN CROWDS』の主題歌の「Crowds」を聴いてカッコ良いと思ってくれた『GATCHAMAN CROWDS』ファンのみなさんに、またWHITE ASHで良かったなって思ってもらえる曲にしたくて作りました。だから、自分たちのモードを引っ張らないようにしようと思ったんですよ。『THE DARK BLACK GROOVE』はサウンドは重いけど体は自然と音にノレるようにしたんですけど、『GATCHAMAN CROWDS insight』はアクションシーンが盛り込まれるって聞いていたので、重さがある曲だと違うなって思って、僕らにしてはストレートなギターロックになりました。一方の「Ledger」は映画『ダークナイト』のジョーカーの、圧倒的な強さや底知れない不敵な感じが好きっていうところからきていて。
じゃあ、曲名はジョーカー役のヒース・レジャーから？
のび太
そうなんです。『THE DARK BLACK GROOVE』の次の一手なのに、「Insight」だけ表題曲だと、またストレートになったのか!?って思われるかなって。アニメに合う曲にしたかっただけですからね。じゃあ、両A面にして、もう一方を今の僕ららしい曲にして、バランスをとろうと思ったんです。実は自主制作の頃に『WHy So SErIouS?』っていうCDを作ったんですけど、それはジョーカーの台詞なんですよ。あと、バンドTシャツに“BY THE WAY WHY SO SERIOUS?”って入れているんですけど、それもジョーカーの台詞で。僕らが初期からいかにジョーカーを好きでいるかを分かってもらうために4月のツアーでその自主制作のCDをプレゼントして、ヒントを与えていたんです。新しい一歩を踏み出すために、原点に戻って曲を作るっていうのもいいかなって。「Insight」は正義で「Ledger」は悪役をフィーチャーしてるところも、バランスがいいんじゃないかと。
いつにも増して考えていますね！ とはいえ、演奏にオラオラ感が出てるところは共通していると思いましたよ。
のび太
やっぱ…ロックバンドだから？（笑） お茶の間に届けるために本来の毒素を抜いて、耳馴染みはいいけどスルッと流れたら、何で僕らロックって言ってるの？ってなるし。
山さん
ギターの空気読んでない感じも聴こえるのかも（笑）。基本はのび太のヴォーカルに負けないフレーズを考えたいので、メロがある裏でメロを鳴らしたりしているので。
サウンドの重心も低めですよね。
のび太
それは、『THE DARK BLACK GROOVE』の次の一手だからというか。重心を低くしても、態勢が簡単に倒れないバランス感覚を会得していると、疾走感があってもそんな簡単に吹き飛ばされない足腰の強さがあるんですよね。
山さん
もともとのび太はリズムにこだわりがあったんですけど、『THE DARK BLACK GROOVE』から剛とのび太でめちゃめちゃ話すようになって。そういうところも出ているのかもしれないですね。
剛
よりカッコ良い音を作っていくために整理整頓するようになって。ひとつひとつの音を吟味するスタイルになりましたね。
彩
私はルート弾きしかしていなくて、そのぶん音色で見せたいと思って2曲それぞれで白と黒、光と影みたいな表現にしました。「Insight」はヒーローに付いてる筋肉みたいな、「Ledger」は不快感を出せるような音にしようかなと。
ずいぶん想像力を膨らませて考えるんですね。
彩
のび太くんの注文もそういうのが多いので。
のび太
「Ledger」はジョーカーの不安を掻き立てるようなキャラクターのイメージが欲しくて。真夜中の路地裏をジョーカーがバールを持って引きずる絵が浮かんで、コンクリートに金属がザラザラこすれる音を入れようと思ったんです。スタジオの踊り場で剛がスコップを使って録ったんですよ。
細かいところまでこだわっていますね！ さらには、3曲目の「The Phantom Pain」にも、KONAMIのシリーズ最新作『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』のタイアップが付いているという。
のび太
3曲でマスタリングしていたんですよ。そのあとにお話をいただいて、できたなら入れちゃおうよって。異例ですよ！
ゲームのイメージに寄り添ったものになっていると思いますが、ビートに特徴がありますよね？
のび太
戦場に向かう男の気持ちをテーマにしたので、整列した兵隊の足音を入れれば伝わるかなって、ドラムのビートにザッザッって入れたんです。やっている作業は音響さんと一緒ですよね。映像に合わせて音を作るっていう。僕らは歌詞にそこまで重きを置いていないからこそ、こういうことができるのかもしれないです。音自体で表現したいので。
そういう意味で言うと、ラストの「Aurora」も絵が浮かぶような美しいナンバーですよね。
のび太
「Aurora」は正直に言うと、このシングルの中で一番好きです。両A面のアイデアが浮かんだ時に、僕は天の邪鬼なんで両A面よりいい曲をカップリングに入れたくなったんですよ。アルバムまでとっておくべきかな？とも思ったんですけど、“最新作が最高傑作”って言っている以上、惜しみなく入れないといけないので！
