【deronderonderon】みんな聴いてる
ジャンルがバラバラだからこそ、お互
いを引き出せる
文学性を感じさせるリリックをひと筋縄ではいかないバンドアンサンブルに乗せ、しかもそれをポップなダンスチューンに仕上げた1stフルアルバム『DIE KILL I』(だいきらい)。deronderonderonの確かなポテンシャルを感じさせる秀作だ。
取材:帆苅智之
deronderonderon(以下、deron)の楽曲は、“喜怒哀楽のどれでもない感情”が表現されているというか、少なくとも白黒がはっきりと分かれているものではないですよね?
さわい
基本的に答えを提示しすぎないとか、そこは意識しているところであったりしますね。もちろんポジティブなものはポジティブに、ネガティブなものはネガティブではあるんですけど、“これ=あれ”というものは出しすぎないように意識してます。
「KICK ME ASS」では、《Clash the wall & Kick me ass》と言いつつも、《暗いね 阿呆みたい》とあって、100パーセント前向きというわけではない。
さわい
全部が前向きだと、“嘘でしょ?”って思っちゃう。今回は“綺麗事じゃない前向きな歌”というのをすごく意識したものが多いです。いろんな人がいると思いますし、日々の中でいろんな葛藤とか不和とか、そういう部分には誰しもがぶつかると思うんですね。その中で“綺麗事を並べられても…”という僕自身の考え方もあって。
「洗脳」の《激しく虚しく笑って》も文学的ですよね。
さわい
うん、ですね。それも同じく…ですね。基本的に全部アンチテーゼなんですよ。表を完全に表と思わないようにする。それを音楽でやれたらいいなと思っています。
で、そうした歌詞の意味合いがサウンドに呼応しているようなところもある。例えば、「ZE/TSU/BO/U」。シンセサイザーの音色が不穏な感じでありつつ、アウトロは密集感が強くて前向きな印象もあって、これまたひと言では表しづらい。
木越
基本deronは曲が先なんですよ。私たちは歌詞を知らない状態で曲を作ってるので、感覚的には逆で。最初は仮の歌詞で、1週間から1カ月後くらいにちゃんとした歌詞で歌い始めて、“へぇ~”って思う(笑)。そういう感じが多いです。
では、サウンドに歌詞が引っ張られるわけですか?
さわい
いや、僕の中では歌詞は曲と同時にほぼ出来上がっていて、“こういうテーマの曲にしよう”というところまでまとめてあるんですよ。
木越
でも、私たちはそのまとめてあるものを知らなくて、音として“こういう感じで”と言われたり、リハに入って“これ、弾いてみて”とかはあるんですけど。
それはちょっと驚きですが、でも、それでまとまっているということは、バンドとしては理想的な姿というか、結構の高みにあると言えるのでは?
木越
みんな聴いてるジャンルがバラバラなんですよ。特定のバンドが好きな人たちが集まっているわけじゃないので、だからこそ、お互いの引き出しを出せることもあって。例えば“メタルっぽいものを入れてみてよ”って言われても、誰もやりたくないとはならなくて、“できるかどうか分からないけど、やってみる”となるんです。それはderonのメリットだと思います。
ばっしー
ギターのフレーズも大枠はさわいが持ってくるんですけど、例えば「dance to the light」なら、この中東風の印象的なリフがすごくいいって思って、そこからどうするかを考えて、違うオクターバー(原音に対して1オクターブ下、2オクターブ下の音を加えるエフェクター)をかけてみたり。そういうアレンジを僕なりにやってますね。それはこのアルバムのいろんな曲に出ていると思います。
木越
私はクラシックあがりなので、みんなが違うことをやっていることがもとになっていたり。あとは、3ピースバンドの感じとかも結構好きで。「ZE/TSU/BO/U」のシンセはがっつりとコードを弾いているんですけど、コードは要らないなと思ったらギターの裏メロみたいな感じだったり、ひたすら私が裏打ちしているみたいな感じだったり、狙ってやったりもしています。楽器はレコーディングの時に下から積んでいくので、印象的なメロディーを先に取られちゃったら自分はもうできないみたいなところももちろんあるし…“そこでどう攻めるか?”みたいなところで、ヴォーカルのさわいとギターのばっしーと私とで“う~ん”って考えながらやってます(笑)。サビをがっつり出したいところはギターのちょい下くらいの強さでいきたいので、ユニゾンを使うんですけど、そうじゃない時はシンセをヴォーカルみたいに使ってますね。
そう。このバンドのメロディーパートはヴォーカル中心ではないですよね。
さわい
そうですね。結構そういうふうに作ってますね。
木越
歌を邪魔しない程度にシンセを一声にしちゃったり。
なるほど。で、そうした歌詞の世界観とバンドアンサンブルの妙味が素晴らしいのはもちろんのこと、それらを小難しくなく、ポップに仕上げているところがこのバンドのもっとも素晴らしいところだと思うんです。躍動感があるというか、ダンサブルというか。その辺はリズム隊の力によるところが大きいと思うのですが、リズム隊のおふたりはどのようにバンドへ臨んでいるのでしょうか?
もりもと
すごくシンプルなフレーズでも“カッコ良い”と思えるものを追及していますね。これまでは勢いと力でごまかしていた部分もあったんですけど、今回はちゃんと音楽に向かっているというか。自分の音を自分で確かめながら、ドラムはリズムの土台となる楽器なので、そこら辺も考えつつやりましたね。
マチルダ
今回はベースとドラムは一緒に録ったんです。
もりもと
今までは別に録ってたんですけど、今回は一緒に。
マチルダ
前作まではほぼ作ってきた時の状態で弾いていて、アレンジしたことが全然なかったんですけど、今作は“ここをもうちょっとこうして”とかいろんなアレンジをしたし、“ここはドラムのフレーズが特徴的だから、ベースとドラムを絡ませてみよう”とか、そういうところもあったので、ドラムと一緒に録るのは楽しかったです。“あ、こことここが合うんだ”って。
やはり演奏に人柄は出てしかるべきでしょうか(笑)。
木越
人柄がポップだから、deronの音楽はポップなんだと思いますよ(笑)。
- 『DIE KILL I』
- ACW-009
- 2016.12.07
- 2160円
デロンデロンデロン:2014年、ロッキング・オンが主催する『RO69JACK』にて優勝アーティストに選出され、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014』への出場を果たす。15年5月に初の全国流通盤ミニアルバム『DIE SUKI』を発表し、『見放題』や『BAYCAMP』などの人気イベントにも参加するなど、活動の場を広げていく。16年12月7日にactwiseよりフルアルバム『DIE KILL I』(だいきらい)を発表。deronderonderon オフィシャルHP