取材:斉藤ユカ

バンドのやんちゃな部分を象徴する1曲
ができた

「ジャパニーズロックファイター」のPVには、西城秀樹さんが出演されていますねよ。

そうなんですよ。この曲が出来上がった時に思い浮かんだんですよね、“成り上がりのロックスター”という役どころで秀樹さんがPVに出てくれたら最高やなと。もともと共通の知人がいて、秀樹さんのライヴを観に行かせていただいたりもしていたんで、一か八かでお願いしてみたんですよ。

そんなロックスター像を哀しくも愛おしい目線で描いた、すこぶる痛快な楽曲ですね。日本のロックを皮肉った歌詞の内容も実にアンダーグラフらしい。

その皮肉で日本でロックをやってるいろんな人がドキッとするかなと思って(笑)。今回は最初から頭で考えずに、勢いのままに作った曲なんですけど、ちょっとダサい感じが逆にカッコ良いなと。僕の思うロックスター像って、まさにPVで秀樹さんが扮したような、輝いていながらもどこか笑える存在なんですよね。だから、曲自体もそうありたかった。アンダーグラフはそもそも、悲しみを吐露して分かち合って、それを強さに変えていくっていう初期衝動で音楽をやってきたんですけど、それだけじゃないことがやっと実感として分かった気がするんです。

しかも、このCDをリリースしてから1年間に発生するアーティスト印税を慈善団体に寄付するのだとか?

実は学生時代から考えていたことなんです。“もし自分がプロのミュージシャンになれたら、いつか人のために何かをしよう”って。個人ではなく、アンダーグラフとして行動したかったんですね。それで『世界の子どもにワクチンを-日本委員会』という認定NPO法人を見つけて、自分で電話してアポを取って、寄付したお金がどういうルートをたどってどう使われるのか、全部説明してもらったんです。僕らが音楽でやりたいことって、結局はライヴに来てくれる人たちに笑顔になってほしいってことなんだけど、その音楽を通じて発生するお金で、世界の子供たちにも同じように笑顔になってほしくて。今まではその意思を通すタイミングが見つけられなかったんですけどね。

ああ、変に綺麗事にしたくないから。

そう、さらっとやるべきだと思った。そういう意味で楽曲に重たい意味合いがない今作が絶好だったんです。

じゃあ、ホント良かった、楽しい曲ができて(笑)。

ほんまですよ。取材受けても、楽しい曲を語るわけだから楽しいしね(笑)。今のアンダーグラフが持つ“どっかアホなやんちゃな部分”を象徴する1曲が欲しかったんですけど、今回はそれを形にできました。

とはいえ、カップリング「ル」は、アンダーグラフの本流に位置するシンプルな1曲ですね。

そこはもう、得意なところで。『ジャパニーズロックファイター』で楽しい感情を極めたので、カップリングではみなさんを安心させようと。ま、どっちの面も見てほしかったからなんですけどね。もっと言えば、次のツアーでみんなに持って帰ってもらうCDの2曲を含めて4本の柱を今こそ提示したかったんですよ。

そうそう、今回は業界初のツアー連動CD! 今作を買って、10月25日から始まるツアーに参加すると、最終的に2枚組み4曲入りシングルが完成するという。

今回のシングルが、CDが2枚入るパッケージになってますから。ライヴに来てくれる人への感謝もあるんやけど、単純にお土産がついてたら楽しいでしょ?

そのお土産CDの1曲目「Sekai-no-Kibou」はライヴのためにあるようなスピード感のある尖った楽曲で、2曲目は名バラード「ティアラ」のライヴヴァージョン。

ぜひ手に入れてほしいですね、ツアーも当然そこを軸にして展開していくつもりやし。春のツアーはアッパーな展開のライヴでしたけど、今回はより起伏のあるところを見せたいと思ってるんで…やっぱりライヴに来た方がいいんじゃないかなぁ(笑)。いや、これはマジメな話、楽しいライヴになると思いますよ。

今年4月のSHIBUYA-AXでのライヴを収めたDVD『spring tour '08 ?呼吸する時間?』を観ても、現在のアンダーグラフの充実度が分かりますよね。

そう言ってもらえるとうれしいです。実はこのDVDは、僕ら発信でリリースを決めたんですよ。“出したいんだ!”と(笑)。そのぐらい手応えがあったというか、第1期アンダーグラフの形が見えたライヴだったから。

集大成というよりスタートという意味合いの方が強かった気がしますが。

まさに。ちゃんと始められたという感覚ですね。ずっと頭の中で想像してた理想のライヴの映像が、実際のステージで再現できたような感じだったんですよ。

では必然的に、次のツアーは楽しみでしょう?

ほんま楽しみですね。しかも来年で結成10周年なんですよ。それは同時に、聴いてくれた人の10年でもあるじゃないですか。だから感謝の気持ちを込めて、20公演全ての場所でそれぞれ違う物語を綴るように1本1本大切にやっていきたいなと思ってます。
アンダーグラフ プロフィール

大阪出身のロックバンド。1998年より自主制作のデモテープを作成し、大阪城公園(城天)でライヴ活動を開始。00年に活動拠点を東京に移し、02年にインディーズ・デビュー・シングル「hana-bira」をリリース。03年にはニッポン放送でオンエアされたのをきっかけに、オールナイトニッポンレコーズからシングル「真面目過ぎる君へ」をリリースし、注目を集める。04年9月にトーレ・ヨハンソンがミックスを担当した、メジャー・デビュー・シングル「ツバサ」を発売。長澤まさみが出演したCMスポットを流すや否や、「長澤まさみが出てるCMは何?」と問い合わせが殺到。また、コンビニなどで流れる同曲を気に入ったリスナーからも問い合わせが殺到し、発売から数ヵ月経ってチャートを一気にジャンプ・アップする。05年に6月に1stアルバム『ゼロへの調和』を発表、06年4月にニッポン放送『アンダーグラフのオールナイトニッポン』が放送開始(07年3月まで)。09年6月にはV6に「red」を楽曲提供した。その後もコンスタントにリリースやライヴ活動などを続け、11年には所属事務所内に自主レーベル<Acorn Records>を設立。12年3月にメンバー脱退により、3ピース編成に。13年3月よりプロデューサーとのコラボレーション企画をスタートさせ、デジタルシングル「空へ届け」(藤井丈司)、「第三次成長期」(島田昌典)、「Mother feat. MICRO (HOME MADE 家族)」(根岸孝旨)、「素敵な未来」(常田真太郎)を4ヵ月連続で発表した。14年7月、日本クラウンより3rdミニアルバム『未来は続くよどこまでも』を発売し、再メジャーデビューを果たす。陰影のある切なげなヴォーカルと、ドラマティックな展開のサウンドがマッチし独自の世界を構築する彼ら。今後も良質な音楽を作ってくれることは確かだ。オフィシャルHP
スタッフ Official Twitter
Facebook

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着