取材:フジジュン

“みんなついて来い!”って言いたいの
かな?山中さんは(笑)

まずは、さわおさんの主催するレーベル“DELICIOUS LABEL”からリリースされた、オムニバス『ELECTRIC RAYS』のお話からおうかがいしたいのですが。

アルバム通して全曲好きな作品って、なかなか出会わないものじゃないですか。だから、僕個人として全曲好きなアルバムが1枚増えて、すごくうれしいなという感じです。僕と気分の近い人はそう思ってくれるんじゃないかなと思います。

僕も聴かせていただいて、初めて聴くけどすごく良いなと思うバンドに出会えたり、まだまだ良いバンドがいるもんだなって思えました。

結局、ロックバンドって、トータルの魅力で誰かを動かしていくものだと思っているんです。作詞作曲のクオリティは高いけど、演奏力は低いとか、ライヴでのパフォーマンス度が低いとか、全部が揃ってるバンドはなかなか少ないかなって思う。曲が好きでも、歌ってる人の顔が浮かばないのはロックンロールバンドじゃないし、CMソングで大ヒットしたけど、その一曲以外には興味がないとかって、それはロックバンドとして寂しいしね。デモテープがたくさん送られてきて、“惜しい!”ってバンドもいっぱいいるんです。

そこで、さわおさんのアンテナに引っ掛かる基準ってどこにあるのですか?

それはもう、勝手な僕判断でのオリジナリティというか。あくまでも僕基準なので、そこに正解はないんですけど、僕はあまり商売でレーベルをやってるつもりもなくて、デリシャスの愉快な仲間たちを集めてるだけですからね。特別なことも全然やっているつもりがなくて、オムニバスを出す理由もバンドで遊ぼうとしたらライヴか作品しかないわけで…キャンプしてもしょうがないですから(笑)。何でとか理由もないし、それを作ることに何も疑問を感じていないんですよね。

さわおさんはレーベル運営があったり、それぞれのメンバーもthe pillows以外の活動があるわけですが、それらで得た物をバンドに持ち帰ってということもあるのですか?

僕と真鍋くんに関しては、完全に別のスイッチでやってるんじゃないかと思います。シンイチロウくんは意外な答えかもしれないけど、Theピーズをやるようになって引け目があるのか、前より真面目になって(笑)。遅刻も減ったし、リハとかも何も文句言わず、言われた通りやるようになって良かったなって。

しかし、前作も過去最高セールスを記録したり、バンド外でも音楽と良い形で付き合えているようですね。今の充実した音楽ライフや、いい意味で肩の力の抜けた状態で音楽と向き合えている感じが、今回のアルバムの楽曲にも表れていますよね。

まずは何より、『PIED PIPER』がすんなりできたから、今みたいなテンションなのかなぁ? これが上手くできなかったりすると、いろんなことのせいにするのかもしれないけど、順調にレコーディングも進み、すごく気に入ったアルバムができたので、それが充実感につながったのかな?

“PIED PIPER”というのは“ハーメルンの笛吹き”という意味ですが、笛吹きというか、ギター弾きの音色についていったら、いつの間にかアルバムの世界にどっぷり漬かってしまう感じや、その胡散臭さも含めてすごくピッタリなタイトルだと思いました。

タイトルはこれまで、キャッチーで分かりやすいタイトルが多かったんで、調べないと分からない言葉っていうのがいいなって思ったのがひとつと、ネタ帳にあった“PIED PIPER”って言葉と、一曲目の“どこに行こうか キミを連れて行くって決めたんだ 悪いけど”ってフレーズが重なって、歌詞やアルバムタイトルにつながったところがありました。

タイトル曲ということもあって、ひとつアルバムを象徴する曲にもなってますよね。

僕の好きなロックンロールでオルタナなアイデアがあり、ポップ感がある曲。今はその3つが凝縮されたものを演りたいと思っていて、最近のthe pillowsらしさもそこにあると思っているんです。それがとてもよく表れているのが『PIED PIPER』や『Purple Apple』で。そこで脱力感のある、ダサいカッコ良さをわざと出すみたいなね。その路線も最近の若いバンドにはあまりいないというか、後継者がいないなって思う。ただ、タイトル曲ではあるんですけど、タイトル曲が全体の楽曲を表すものって意識はまったくないんです。2008年のthe pillowsのキャッチフレーズという感じです。

直訳するとすれば、“ついて来いよ”みたいなね。そこで首に縄付けて全員を連れていくんじゃなくて、俺らのロックンロールマジックに騙されたいヤツはみんなまとめてついて来いみたいな感じですよね。

そうですね。そう思っているというよりは半信半疑な部分があって、そういう男になりたいって自分に言い聞かせてる感じかな。“みんなついて来い!”と言いながら、“みんなじゃねぇよ”って自分もいるかな。でも、“みんなついて来い!”って男でいたいのかな、山中さんは。だから、そこはツアーが終わってから考えようかな(笑)
the pillows プロフィール

1989年、山中さわお(Vo&Gt)を中心に結成。既存のJロックとは一線を画した、洋楽的な視点を持つギター・ロック・バンドの先駆者的存在。91年5月にシングル「雨にうたえば」で<ポニーキャニオン>よりデビュー。1993年にリーダーの上田ケンジが脱退し、表立った活動が休止状態になるも、翌年<キングレコード>に移籍し、残った3人で活動を再開。バンド・ブームの余韻が残る90年代前半、過小評価されていた彼らの音楽だったが、97年1月発表の5thアルバム『Please Mr. Lostman』より、徐々に状況が変わっていく。60's風のテイスティなメロディ、シンプルかつラウドなサウンドが耳の肥えた若いロック・リスナーを中心に話題を呼び、99年1月に傑作の誉れ高い7thアルバム『RUNNERS HIGH』をリリース。ロック・ファンを中心に絶大な支持を獲得していった。00年7月発表の「Ride on shooting star」はOVA『フリクリ』の主題歌、11月発表の「I think I can」が『スポーツMAX』のEDテーマに起用。その後もコンスタントにリリースやライヴ活度を続け、06年より<avex trax>に移籍。09年に結成20周年を迎え、結成20周年記念日となる9月16日には初となる日本武道館単独公演を敢行。チケットは一般発売後10分で完売したため入手困難なプレミアムチケットとなり、会場には全国から1万人のファンが集結した。また、そんな彼らは多くのミュージシャンから支持を得ており、14年2月には結成25周年を記念したトリビュートアルバム『ROCK AND SYMPATHY』がリリースされた。オフィシャルHP
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