【AIR】シンプルだからこそ、広がる
のかもしれません

AIRの10枚目となるアルバム『Nayuta』が完成!耳に優しい音色とシンプルな音数で構成されながら、彼方まで広がるようなスケール感がある、まさに今のAIRだからこそ生み出せた珠玉の作品だ。
取材:高橋美穂

まず作る前に、どのような作品にしようというヴィジョンはありましたか?

ジャケットに『ホワイト・アルバム』みたいなヴィジョンがあって、ってところが取っ掛かりなんです。真っ白で、ものすごくスケール感のあるってことだけでしたね。“Nayuta”って言葉に集約されてるんじゃないですかね。

印象的なタイトルですよね。

日本語でも英語でもなくって、ものすごくスケール感がある言葉を探してて、たまたま兵庫県の西はりま天文台公園の、“なゆた”っていう日本で一番おっきな望遠鏡を見に行って、これだと(笑)。言葉的にも可愛いというかポップだし。

日本語でも英語でもない言葉にしたのはどうしてですか?

うーん、パッて言葉ひとつに集約されるのは、ちょっと今回違うかなと思って。つってもこれ、サンスクリット語か何かだと思うんですけど(笑)

音は全体的に、アコースティックなものが多いし、耳に優しい印象がありますね。

確かに、客観的に聴いて安らげる音がいいなとは思って。

ヘヴィな音を出していた時期もありましたけど、今は安らげる音を選んでいるのはなぜですか?

リアリティがあるからでしょうね。この年になってねぇ、ヘヴィな音は興味があることでもないし、若いからこそリアリティがあったと思うし、それを進歩なく嘘吐きながらやってもしょうがないですからね。

2曲目の「Nayuta」には“深呼吸”って歌詞も出てきますけど、聴き手や世の中に対して深呼吸してのんびりいこうってメッセージにも捉えられるのかなって。

そんなに構えるようなメッセージはないんですけど、何らかの幸福感や感動をもたらせて、この曲に出会えて良かったと思ってもらうことが、やっぱり僕の音楽をやってる一番の意味合いなので。

アルバムのタイトル曲になってますが、曲ができたのと、アルバムタイトルを決めたのと、どっちが先なんですか?

曲ですね。天文台で望遠鏡を覗いた時にできたんです(笑)

天文台でそれほどインスピレーションを受けたんですね。

うん、望遠鏡を覗くとありとあらゆる惑星や恒星が見えて、すっげーワクワクするんですよね。それで、その感覚をそのまま感じられる作品を作りたいなぁと思ったんで。

今のAIRのシンプルなサウンドのスタイルでスケール感を追求するのって、難しい気もしますけど。

そうですねぇ…逆に、シンプルだから広がるのかもしれませんしね。いっぱい詰め込まれてるとギュウーって…何か抽象的ですけど(笑)。でも、音数少ないと、隣の肩もぶつからないっていうか(笑)

なるほどね。あと3曲目の「Janaica」のメロディーは、民謡っぽい感じがしますね。

何か“エエジャナイカエエジャナイカ”みたいな感覚は、前のアルバムから何となくあったりして。まぁ、裏ビートっていうとジャマイカっぽいけど、エエジャナイカとジャマイカも掛けつつ(笑)。確かに和な感じはあるかも。使ってる楽器が圧倒的に西洋のものになるのは必然だけど、その中でも日本人なんだなぁとか、アジア人なんだなぁっていうのは、年取ってくるとどんどん思わされるし、いい意味で。でも、いわゆる僕が死ぬほど好きなギターだったり、西洋の楽器とも意外とリンクするんですよね。

声質にも合ってるメロディーですよね。

まぁ、童謡とか唱歌向きな声ではあると思う(笑)。実際、小学生の頃とか音楽の授業が大好きだったし。やっぱりそういう牧歌的なものは染み付いてる気がしますね。

子供の頃の影響が今になって出てくるって面白いですね。

若い頃は…って言うとものすごく年食ってるみたいですね(笑)。やっぱり憧れみたいなものが強いと思うんです。それがなきゃ嘘だし。そういうものを通過して、結局自分にとって一番リアルなことが集約されてきたのがここ数年なので、そういう部分を大切にしていきたいですね。もちろんいろんな音に対する挑戦は続けていきたいですけど。

そんな中で、7曲目の「Only Just」の歌詞はお金や権力に斬り込んでますね。

たまには毒づきたくもなります(笑)。基本蒼いですよ、やっぱり(笑)。一生なくならないと思いますから。でも、昔だったらそれを、こんなブルージーには歌わなかった気はするな。

確かに。また、「Have Fun」のThe Far East mixが入ってますけど、いわゆるオマケ的なリミックスではなく、大胆に変化してますね。

別物ですね。考えられるパターンはちゃんと駆使して。これもアジアっぽいですね。もともとの『Have Fun』はサザンロック的な西洋な曲だけど、やっぱり東洋のアイデンティティも一緒になると、全部を総括するタイトルと自分の中ではリンクするし。テーマが呼んでくれたみたいな、すごく意味があるミックスですね。ブルースハープだったり、ギターだったり、生ドラムだったりってネイティヴなものと、今回のミックスみたいな電気的なものと、両方が共存しながら、アジアになってさらには『Nayuta』につながる!っていう(笑)
AIR プロフィール

96年、当時人気絶頂であったオルタナティヴ・ロック・ユニット「スパイラル・ライフ」の活動休止を宣言。その後すぐさま、車谷浩司はAIRという名でソロ・キャリアをスタートさせる。
ミニ・アルバム『A・I・R』にてデビュー。以降、ジャズ/ハードコア・パンク/ミクスチャー・ラップ/パワーポップ——と多種多様なスタイルを貪欲に取り込み、AIR流ロックをストイックに追及している。また、ワカモノの心に巣食うニヒリズム、シニシズムを蹴散らすアツい言動およびアティテュードも魅力のひとつではないか。AIR Official Website
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OKMusic編集部

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