ディスコに参入した大物アーティスト
の極めつけディスコヒット5曲(その
1)

もともとはディスコ向けのアーティストではないが、その流行に目ざとく反応して、ディスコヒットを飛ばした大物アーティストは少なくない。大物アーティストは予算もふんだんに使えるだけに、良い曲をディスコに投入できた。前に紹介したストック・エイトキン・ウォーターマンのようなプロデューサーチームや有名なソングライターへの楽曲提供を依頼し、ディスコヒットではあっても後世に残る名曲を生み出している。今回はそんな大物アーティストのディスコヒットを紹介してみよう。

ディスコ音楽がポピュラー音楽のひとつ
のジャンルに

70年代の中頃までは、世界的に名前が知られていたアーティストは多いが、ディスコ界に参入することをためらっていた人たちが少なくなかった。それは彼らがディスコヒットの存在自体を低く見ていたからである。確かに、ディスコ音楽にはジンギスカンやシルバー・コンヴェンションらのように一発屋も多かったし、踊ること以外に使い道のない音楽も多々あったのも事実だ。ただ、77年にアメリカで公開された映画『サタデー・ナイト・フィーヴァー』が大ヒットしてからは、ディスコ音楽もポピュラー音楽のひとつのジャンルとして完全に認知されるようになった。それからは一発屋であろうが大物アーティストであろうが、ディスコでのヒットを狙うことが普通になっていくのである。商業音楽というものは、その性質上、巨大マーケットには決して抗えない存在であり、70年代の終わりから80年代中期にかけて、ポピュラー音楽市場でもっとも高セールスを見込めるのがディスコ音楽であった。

それでは、ディスコに参入した大物アーティストの極めつけのディスコヒットを5曲セレクトしてみよう。

1.「アイム・エブリ・ウーマン」(‘7
8)/チャカ・カーン

ディスコヒットも多い白黒混合ファンクグループのルーファスに在籍していたチャカ・カーン。これは78年にグループ活動と並行してリリースしたソロ第一弾アルバム『恋するチャカ(原題:Chaka)』の1曲目に収められたナンバー。絢爛豪華なストリングスと上品なファンクのリズムが特徴で、今ではディスコ・クラシックスとして認知されるほどの曲となった。彼女の高低自在の伸びやかなヴォーカルと、一流スタジオミュージシャンによるバックの演奏は素晴らしく、それまでのルーファスでは実現できなかった彼女の資質が開花した名曲だ。ソングライターはヒットメーカーのアシュフォード&シンプソン夫妻で、バックヴォーカルには前回紹介したアベレージ・ホワイト・バンドのヘイミッシュ・スチュアートやホイットニー・ヒューストンの母親のシシー・ヒューストンが参加している。その縁か、93年にはホイットニー・ヒューストンがこの曲をカバーし本家を凌ぐ大ヒットとなり、全米ダンスチャートで1位を獲得している。ただし、チャカのバージョンのほうがはるかにクオリティーが高い。

2.「ミス・ユー」(’78)/ローリング
・ストーンズ

ストーンズが78年に放ったディスコヒット。曲自体はディスコ向きだとは思えないが、リズムセクション(特にベース)は明らかにディスコ的なフレージングを多用している。この曲を収録したアルバム『女たち(原題:Some Girls)』は、彼らの作品の中でも特に開かれた仕上がりで(コアなファンだけに向けられたものではなく、一般のリスナーやディスコファンにも受け入れられた)、この曲をはじめ名曲が詰まった優れたアルバムである。ディスコ向けにミックスされた「ミス・ユー」の12インチシングル(ストーンズ初の12インチシングル)は、8分以上に及ぶロングバージョンであった。このこともあって、全米ダンスチャートでは6位まで上昇した。このロングバージョンは現在入手困難で、『レアリティーズ 1971-2003』(‘05)にのみ収録されている(ただし、こちらもオリジナルよりは若干短いエディット版)ので、興味のある人は中古盤店で探してもらいたい。

3.「フィジカル」(‘81)/オリビア・
ニュートン=ジョン

それまで清純派のカントリー系ポップスシンガーとして知られていた彼女であったが、この曲で大胆なイメチェンを図り大成功を収めた。MTVがスタートしたばかりの頃に、オリビアがレオタードでダンスする有名なPVは当時ヘビーローテーションであった。オリビアの事務所によるマーケティング戦略の勝利だと言えるかもしれないが、この曲が売れた最大の要因は、踊って良し、聴いて良しのこの曲の素晴らしさにある。この曲が全米1位になった時、前週の1位から2位に転落したのはホール&オーツの「プライベート・アイズ」で、こちらももちろんディスコで大ヒットしたナンバーだ。そして、「フィジカル」の1位は10週連続となり、翌年には日本でもオリコンの洋楽チャートで9週連続の1位となっている。今聴いてもそんなに古くなっていないのは、シンセの使い方が控えめだからだと思う。途中のギターソロはTOTOのスティーブ・ルカサー。マイケル・ジャクソンの「スリラー」ではエドワード・ヴァン・ヘイレンがソロ弾いてたし、当時はディスコ音楽と軽めのアメリカンハードロックが流行っていたってことがよく分かる。

4.「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハブ・
ファン」(‘83)/シンディ・ローパー

奇抜なファッションと派手な化粧がデビュー当時の売りだったシンディ・ローパー。この曲もMTVのヘビーローテーションからディスコに火が付き、世界中で大ヒットした。当初の邦題は「ハイスクールはダンステリア」で、のちにシンディ側からクレームが付き、現在のタイトルに変更されている。彼女が登場した時の衝撃はレディ・ガガやケイティ・ペリーらのそれと酷似している…というか、シンディが存在しなければ、おそらくガガもペリーも存在していなかっただろう。軽快なレゲエのリズムと縦横無尽に飛び回るような彼女のヴォーカルは、当時のディスコファンを狂喜させた。ちょっとオツムの弱い女子を演じていたのも束の間、続いてリリースされた「タイム・アフター・タイム」では実力派シンガーというだけでなく、優れたソングライターとしても認められることになった。短期間に、これだけイメージの違うスタイルを演じ分けたのは彼女以外にはマドンナぐらいしか存在しないだろう。「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハブ・ファン」は全米チャート2位(日本ではオリコン洋楽チャートで堂々の3週連続1位)となり、同時期にリリースされたマドンナのディスコヒット「マテリアル・ガール」とは、偶然だけど基本部分がよく似ていると思う。

5.「イージー・ラバー」(‘84)/フィ
リップ・ベイリー&フィル・コリンズ

84年に突然リリースされた、アース・ウインド&ファイアーのリードヴォーカリストであるフィリップ・ベイリーと、ジェネシスのドラマー兼ヴォーカリスト、フィル・コリンズのデュエット作。シンセポップ全盛の時代にあって人力を中心にした演奏で、ディスコ界へ殴り込みをかけ大成功を収めた。それもそのはず、この曲のソングライターはベイリー、コリンズと、もうひとりトップのスタジオミュージシャンでベーシストのネイザン・イーストの3人なのである。最高のベーシストとドラマーが絡んでいるだけでなく、ベイリーが在籍しているEW&Fもまた最高の人力演奏で勝負するグループだけに、3人とも人力演奏にかける思いは強い。それにしても、この曲の演奏は強力だ。1度聴いてもらえれば、その迫力は分かってもらえるはず。僕は当時、12インチ・シングル(12インチ・シングルは音が良いのだ)を買ったのだが、その音圧のすごさはぶっ飛ぶぐらいの迫力であった。これを書くのにCDの音源を聴いてみたが、やっぱりすごかった。何がすごいかというと、フィル・コリンズのプロデュース。自分のドラムの音を一番前に出している。だから、自己顕示欲が強い奴は…いや、このドラムがあるから大迫力なのである。こんなミキシング、ミュージシャン(特にドラマー)でなければできないと思う。曲の良さと大迫力の人力演奏で、ディスコでも大ヒットしたのである。途中のギターソロはジェネシスのサポートメンバーでフィル・コリンズがお気に入りのダリル・ステューマー。全英チャート1位、全米チャート2位。フィリップ・ベイリーのソロアルバム『チャイニーズ・ウォール』(‘84)に収録されている。

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著者:河崎直人

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