ジャネット・ジャクソンの極めつけデ
ィスコヒット5曲

バブルで盛り上がる80年代後半、ディスコで絶大な人気を誇ったジャネット・ジャクソン。彼女とジャム&ルイスのタッグで、現在に続くディスコ音楽のプロトタイプを作り上げた。

日本がバブル景気で盛り上がるなか、ジャネット・ジャクソンのアルバム『コントロール』(‘86)がディスコで大ブレイク。プロデュースを手がけたジャム&ルイスともども、バブルが崩壊する90年代中期まで、ジャネットはディスコサウンドを牽引する存在となる。

兄の陰に隠れ、なかなか成功を手にでき
ずにいたジャネット

1982年、ジャネット・ジャクソンは16歳でデビュー。名門のジャクソン家ながら数年間ヒットに恵まれず、彼女は相当苦労していたようだ。それもそのはず、83年には兄マイケルの『スリラー』がリリースされ、84年にはプリンスの『パープルレイン』が出るなど、革命的なアルバムが続々とリリースされ、それ以前と以後の音楽シーンは大きく変わろうとしていた時期である。黒人がソウルやブルースでなく、ロックやポップスのアーティストで通用する時代の到来であり、ラップやデジタル機器を導入したファンクも登場していた。音楽の流行が数カ月単位で変化するこの時代、1歩進んだ流行の動向が読めるかどうかが、成功するかどうかの分岐点であった。
1985年、ジャネットは、プリンスの元で活動していたジミー・ジャム&テリー・ルイスにプロデュースを任せ、最先端のダンス音楽を生み出すために試行錯誤を続けていた。そして、86年2月に彼女の3枚目となる『コントロール』がリリースされるのだ。このアルバムは全世界で1300万枚以上を売り上げるメガヒットとなり、シングルカットされた「Control」や「The Pressure Principal」をはじめ計5曲がダンスチャートで1〜2位を獲得(R&Bチャートでは5曲が1位)、あっと言う間にディスコの女王となった。以降もジャム&ルイスのサポートで『リズム・ネイション・1814』(‘89)や『ジャネット』(’93)などの大ヒットアルバムをリリース、ディスコ界だけでなくR&B界になくてはならないほどのビッグな存在に成長する。

さて、それでは、ジャネット・ジャクソンの極めつけディスコヒットを5曲セレクトしてみよう。

1.「恋するティーンエイジャー(原題:
What Have You Done For Me Lately)」
(‘86)

アルバム『コントロール』からの記念すべき第一弾シングル。全米ダンスチャートで2位まで上昇する。チープでない重厚感のある打ち込みが印象的なナンバーで、品の良いデジタルサウンドが特徴。最大限の録音技術を駆使して、ダンスに特化した最先端の音楽を提示したジャム&ルイスは、この作品以降、多くのR&B作品を手がけることになり、一時代を築くプロデューサ一チームとなる。ジャズっぽいピアノやたっぷりの効果音がゴージャス。一時期、日本のディスコでは、この曲をはじめ、『コントロール』収録の曲ばかりがかかることが少なくなかった。

2.「あなたを想うとき(原題:When I
Think Of You)」(‘86)

出だしだけを聴くと、ポップロックのようなさわやかさを感じるナンバー。ここでジャム&ルイスは、ヴォーカリストとしてのジャネットの魅力を前面に出そうとしているようだ。メロディーがとても美しく、彼女のやさしい声が引き立つようなプロデュースとなっている。リズムはアーチー・ベル&ドレルズの「タイトゥン・アップ」を下敷きにしていて、ゆったりと踊るのに適したミディアムのBPMだ。アルバム『コントロール』に収録、ビルボードのポップスチャートとダンスチャートで1位を獲得している。R&Bチャートでは3位どまりであったが、冒頭で述べたようにポップロック的な仕上がりであるだけに、首脳陣(ジャネットとジャム&ルイス)には想定範囲内の結果だっただろう。

3.「リズム・ネイション(原題:Rhyth
m Nation)」(‘89)

前作『コントロール』に並ぶ大ヒットアルバム『リズム・ネイション1984』(‘89)に収録されたナンバー。『コントロール』の33年後にリリースされているだけに、ディスコで流行しているダンスの内容も変わってきていることが分かる。曲のテンポがかなり速くなっているし、低音部がより低く重くなっている。また、ドラムの打ち込みがニュー・ジャック・スイングっぽい“揺れ”を感じさせる。この曲のミュージックビデオはマイケルの「スリラー」と同様、ドラマ仕立てになっていて、ジャネット及びバックのダンサーが完璧なダンスを披露しているのだが、兄妹だけにジャネットはマイケルにそっくりだ。歌詞は平等とか差別についての内容で社会派っぽいが、曲は明らかにディスコ向けに作られているところが面白い。

4.「オールライト(原題:Alright)」
(‘90)

これも『リズム・ネイション1984』に収録。ハードなダンスナンバーである。全米ダンスチャートで1位、R&Bチャートで2位となっている。ジャネットの早口のボーカルや金属的で硬いリズムセクションの音が、ダンスしろと煽ってくる感じ。シンプルなメロディーだが、何重にも重ねたバックボーカルや継続して流れるサンプリング音をはじめ、ヒップホップのグルーブを取り入れるなど、凝りに凝った制作になっている。ポール・ヤング、カルチャー・クラブ、ユーリズミックス、シンプリー・レッドなど、当時ディスコで人気のあったソウル寄りのブリティッシュ・ミュージシャン勢は、ジャム&ルイス制作の緻密なサウンドに相当影響されていることがわかる。

5.「それが愛というものだから(原題:
That’s The Way Love Goes )」(’93
)

ジャネット最大のヒットとなった5thアルバム『ジャネット』(‘93)に収録の名曲。全米チャート3部門(ダンス・R&B・ホット)で1位を獲得、ディスコではリミックスバージョンが大ヒットした。現在はアルバム『Janet. Remixed』(’95)に収められている。彼女のやさしいヴォーカルにマッチした素晴らしい曲だと思う。前作や前々作では最先端のダンス音楽を提供しなければいけないという、ある意味で枷になっていた部分があったが、ディスコからクラブへと時代は変わりつつあり、ジャネット自身もしっとりした歌を届けたいという想いに駆られたのではないだろうか。単にブラコンブームに便乗しただけかもしれないが…。

著者:河崎直人

OKMusic編集部

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