マイケル・ジャクソンの極めつけディ
スコヒット5曲

マイケル・ジャクソンの40年に及ぶ音楽生活の中から、ディスコでヒットした作品をピックアップ

ディスコファンには『オフ・ザ・ウォー
ル』と『スリラー』が双璧

マイケル・ジャクソンの全般の活動については、ここで述べるまでもないと思うので、ディスコヒットを連発していた70年代の終わりから80年代中頃までに焦点を絞って紹介してみよう。
マイケルの輝かしいソロ活動は、79年にリリースされた『オフ・ザ・ウォール』から始まると言ってもいいだろう。名義上のソロアルバムとしては5作目に当たるのだが、それまでの作品はヴォーカリストとしての企画盤のような傾向があるのに対し、『オフ・ザ・ウォール』からプロデューサーのクインシー・ジョーンズとタッグを組み、オリジナル曲も含んだ本当の意味でのソロアルバムを作るようになる。このアルバムはチャートで3位となり、800万枚以上を売上げただけでなく、ディスコでも爆発的な人気を得る。

本作からのシングルリリースは、本人の作詞作曲になる「Don’t Stop ‘Til You Get Enough」と名ソングライターであるロッド・テンパートンが書いた「Rock With You」がチャート1位に、「Off The Wall」と「She’s Out Of My Life」が10位であった。1枚のアルバムから4曲ものベストテンヒットを生む異例の結果となり、ここから彼が亡くなるまでの間、稀代のトップアーティストとして走り続けることになる。

『オフ・ザ・ウォール』に続いて82年にリリースされたのが、アメリカ音楽史上でもっとも売れたアルバムと言われる『スリラー』だ。前作と本作の間には、デジタル録音やMTVの登場があり、ポピュラー音楽が大変革していた時期と重なる。マイケルとクインシーの先読みと仕掛けはまさにプロフェッショナルの仕事だと言えるだろう。

本作にはディスコファンには説明がいらないぐらい有名な3曲が収録されている。まずはマイケルがムーンウォークを初披露した「Billie Jean」(1位)、エドワード・ヴァン・ヘイレンがギターを担当した「Beat It」(1位)、PVの在り方に革命を起こした「Thriller」(4位)で、どれもディスコファンには忘れられない曲である。少し間はあくが、87年にリリースされた『Bad』に収録されたタイトルトラック(1位)も、ディスコファンにはお馴染の曲だが、ディスコ時代のマイケルというと、やはり『オフ・ザ・ウォール』と『スリラー』の2枚がしっくりくる。

さて、それでは、マイケル・ジャクソンの極めつけディスコヒットを5曲セレクトしてみよう。

「Don’t Stop ‘Til You Get Enough」
(‘79)

不穏なルイス・ジョンソンのベースから始まるが、一転してめくるめくストリングスが登場、まさにディスコ全盛期のサウンドで包まれる。マイケルは全編ファルセットで通し、ヴォーカルというよりはリズムセクションの一員になったようで、リズムのメリハリを巧みに付けている。この曲こそ、ソウルでもファンクでもない新たな黒人音楽を提示してみせたマイケルの真骨頂がある。彼のヴォーカルはホーンセクションよりもパーカッシブで、そのキレは彼の踊りを彷彿させるようだ。バックは泣く子も黙る凄腕が勢揃いのクインシー・ジョーンズ・ファミリーが受け持っている。

「Rock With You」(‘79)

ギターのカッティング、シンセサイザー、ストリングス、ホーンセクション、テンポなど、全てがディスコで踊らせるために計算された曲だと思う。ヴォーカルも演奏も冷静で、決して熱くならない。このクールさこそがディスコで熱狂を呼んだサウンドなのだ。お笑い芸人が自分のネタで自ら笑ってしまったら興ざめするように、ディスコで踊らせるためには演奏者が熱くなってはいけない。これはディスコ音楽についてのクインシー・ジョーンズの美学なのかもしれないが正解だろう。ある意味で、ジェームス・ブラウンのファンクとは対極にある音楽だと言える。

「Billie Jean」(‘82)

レオン・チャンクラーとルイス・ジョンソンがリズムセクションを担当した80年代らしいサウンドを持ったディスコナンバー。リズムはシンプルで、単調なフレーズが延々と続くところがダンスにはもってこいだ。基本は人力で演奏しているが、打ち込みも導入しつつデジタルっぽく見せた演奏だ。聴覚のすぐれたクインシーは、この時点ではまだリズムマシーンを全面的には信頼してなかったのだろうと思う。この曲はマイケル自身が書いていて、メロディーが秀逸なので、踊らずに聴くだけでも引き込まれる強みがある。彼の全キャリアの中でも間違いなくトップにランクされる曲だ。当時、ムーンウォークを初めて披露したのがこの曲だということで大きな話題となった。

「Beat It」(‘82)

当時流行していたアメリカンハードロックとR&Bを混ぜ合わせた、少しキワモノ的なダンスナンバー。これもマイケルの作詞作曲で、ディスコでは大いに受けた。特にゲストで参加したエドワード・ヴァン・ヘイレンのリードギターは踊りを激しくさせる要素があり、この曲のヒット以降はヴァン・ヘイレンの曲もディスコでローテーション化されていた。当時、大人のディスコファンからは「ちょっとロックし過ぎじゃない?」との声もあったが、マイケルが出す曲ならなんでも売れた時代であった。他にトトのジェフ・ポーカロ、スティーブ・ルカサーらがバックを務めている。

「Thriller」(’82)

MTVの登場によってPV垂れ流しがスタートした時代、この曲のPVは14分弱もあり、まるでミュージカル映画のような仕上がりであった。PVの革命を起こしたことでも忘れられないナンバーだ。ディスコではPVのようなゾンビダンスが世界中で大流行、マイケルの人気は不動のものとなる。ここでの演奏はシンセサイザーを中心に、ギターとホーン以外はほとんど打ち込みで仕上げられている。アルバム『スリラー』は史上もっとも売れたアルバムとしてギネス認定されており、1984年のグラミーでは8部門受賞という栄誉に輝いている。僕は、楽曲としては、3)や4)には劣ると思うけど、ディスコでのヘビーローテーション度合いを考えると、やっぱり代表曲として上げざるを得ない。

著者:河崎直人

OKMusic編集部

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