アース・ウインド&ファイアの極めつ
けディスコヒット5曲

70〜80年代のディスコで人気のあったグループやシンガーは星の数ほどあるが、トップの座に君臨していたのがアース・ウインド&ファイアだ。

アース・ウインド&ファイアは、70年代後半から80年代中期にかけてディスコで大きな人気を得たが、最初からディスコ向けの音楽を専門にやっていたというわけではない。デビューから2作はジャズファンク作品をリリースしていたものの大きな注目を集められず、3作目から大幅なメンバーチェンジを行ない、ファンクとソウルを中心にした路線に転向している。それまでの黒人のファンクやソウルグループとは違って、ロックフェスにも精力的に参加するなど、黒人と白人を区別することなく活動したことで、大きな成功を成し遂げることになった。

アース・ウインド&ファイアというグル
ープ

彼らの初期の成果としては、5thアルバム『太陽の化身(原題:Open Our Eyes)』(‘74)6thアルバム『暗黒への挑戦(原題:That’s The Way Of The World)』(’75)7thアルバム『灼熱の饗宴(原題:Gratitude)』(‘75)の3枚が挙げられる。これらのアルバムは今聴いてもまったく古びておらず、シャープで瑞々しいEW&Fならではのファンクサウンドに仕上がっている。

75年にはヴァン・マッコイの「ハッスル」が大ヒット、ここから世界的なディスコ音楽のブームが広がったと言えるだろう。76年にはジャズギタリストのジョージ・ベンソンが最初期のフュージョン作品『ブリージン』をリリース、ディスコ音楽とフュージョン音楽の2大ブームの波が押し寄せる時代に突入するのである。

では、ディスコファンに向けたEW&Fの5曲を紹介したいと思う。先ほども述べたように、EW&Fはディスコ音楽専門のグループではないため、ここで選択した5曲が必ずしも彼らの最上の曲ではない。あくまでも“踊るのに適した5曲”というセレクトなので誤解なきよう。

1.「宇宙のファンタジー(原題:Fanta
sy)」(‘77)

77年リリースの9thアルバム『太陽神(原題:All ‘N All)』(‘77)に収録。静かな導入部から一転、シンプルで覚えやすいリフへと移行するあたりがディスコで人気を集めた要素だろう。丁寧なコーラスワークはゴージャスで素晴らしく、フィフス・ディメンションの大ヒット「アクエリアス」(’69)のヴォーカルテクニックにインスパイアされたのかもしれない。当時は日本でもディスコに人気が集まりつつあった時期で、ただ踊らせるためだけに作られた凡庸なディスコ音楽が多いなか“さすがはEW&F!”と唸らせてくれた一曲。ただ、この曲は日本では爆発的なヒットになったものの、アメリカでは大ヒットには至らなかった。哀愁を帯びたメロディーが、特に日本人の琴線に触れたのだろう。

2.「ジュピター(原題:Jupitar)」(
‘77)

この曲も9thアルバムに収録。日本ではシングルカットされたが、アメリカではされていない。歯切れの良いホーンセクションが印象的なファンクバンドとしてのEW&Fが堪能できるi一曲だ。二拍三連の多用や転調を繰り返すなど、リスナーのテンションを高める技術がいくつも使われていて、このスタイルこそがEW&Fの最大の特徴とも言える。今回セレクトした5曲の中では、もっとも彼ららしい、黒っぽいグルーブを感じさせてくれるナンバー。90年代以降は、クラブDJのサンプリングネタとしてもよく使われている。

3.「セプテンバー(原題:September)
」(‘78)

当時はシングルのみでリリースされ、『ベスト・オブ・EW&F・VOL.1』(‘78)に収録された。全世界で大ヒットし、彼らの代表曲というだけでなく、ディスコの代表曲のひとつとしてもよく知られている。リーダーのモーリス・ホワイトが76年に設立したカリンバ・エンターテインメントは、ディスコ向けのヒット曲を連発しており、77年に大ヒットしたエモーションズの「ベスト・オブ・マイ・ラブ」も彼のプロデュース作品。同じプロダクションで作られているだけに「セプテンバー」と「ベスト・オブ・マイ・ラブ」は構成やグルーブ感に似た傾向がある。それにしても、同時期に複数曲のメガヒットを連発するのだから、この時期のEW&F(モーリス・ホワイトと言うべきか)は向かう所敵なしの独走状態であった。

4.「ブギー・ワンダーランド(原題:B
oogie Wonderland)」(‘79)

これまたバカ売れしたディスコの代表曲のひとつである。アルバム『黙示録(原題:I Am)』に収録されている。「セプテンバー」から1年ほどしか経ってないが、この時期は彼らがディスコ向けヒットに最重点を置いている。この曲ではエモーションズをヴォーカルに迎え、デヴィッド・フォスターやトトのメンバーをレコーディングに起用するなど、これまでのEW&Fサウンドからの変化を図っている。ここでの方針転換は、これまで以上に白人層へと食い込む結果となって80年代へと突入していくのである。この曲の下敷きになっているのはオージェイズの大ヒット曲「裏切り者のテーマ(原題:Back Stabbers)」(‘72)で、これはディスコ初期の代表曲のひとつだ。

5.「レッツ・グルーブ(原題:Let’s
Groove)」(’81)

時代は80年代に突入し、彼らの勢いにも少し翳りが見え始める時期だが、この曲はR&Bチャートで8週間1位に輝いたメガヒット。これもディスコ曲の定番として今でも多くの人に愛されている。ここでは久しぶりに「セプテンバー」系のグルーブで勝負しており、覚えやすいメロディーと、最初から最後までBPMを変えないあたりにディスコヒットに向けた執念すら感じる。このあと、80年代中頃に差し掛かると、ディスコはテクノやユーロビートといった新しい音楽傾向へと移行し、EW&Fも新たな音楽表現を求めて模索することになる。しかし、80年代初頭までのような世界的なヒットは望むべくもなく、グループとしては失速していくのである。

OKMusic編集部

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